
イジワルな彼女。
第8章 絆-キズナ-
「すみません」
女性は会釈しながら
そう呟くと、僕の横をすり抜けていく。
僕はそのまま改札を出たが、
女性の声が気になり立ち止まった。
改札は6つある。
僕はその全てが見渡せる場所に立ち、
ひたすらあの女性の姿を探した。
女性の後ろ姿しか見ていなかった僕は、
どんな服装だったかも曖昧で…
明るめの髪色だったことしか記憶にない。
おまけに帰宅ラッシュの時間なのか、
人の波は途切れることがない。
女性の姿をなかなか見つけられず、
僕は焦っていた。
「!」
少しして、
僕から見て左から2番目の改札から
あの女性が出てきた。
女性の顔を見た僕は確信した。
早歩きで過ぎ去るその背中に、
勇気を出して声を掛ける。
「あの!すみません!」
その声で、女性は振り返った。
