
イジワルな彼女。
第8章 絆-キズナ-
亮太は原も巻き込み、
執拗に僕を問い詰めてくる。
2人の様子は、すっかりいつも通りだ。
「やっぱり、お似合いの二人だな?」
僕は笑いながら、そう言い放った。
「…」
「…」
「じゃあ、そろそろ俺帰るわ」
財布からお金を取り出そうとしたが、
「いらねーって!」
「うん!大丈夫。ほんとありがとね!」
2人から止められてしまった。
「わかった。じゃあ、また明日!」
「おう!」
「うん、また明日ね!」
カラオケBOXを出て、駅に向かいながら
僕はずっと考えていた。
春菜とも…亮太と原のように
お互いがちゃんと言いたいことを
言い合えていたのなら、
僕はまだ春菜と続いていたのだろうか。
春菜のことを、
僕も亮太みたいに引き止めていたら…。
春菜とやり直したいとは思っていないが、
もし唯さんに出逢っていなければ
僕の考えも変わっていたかもしれない。
僕はイヤホンを探したが、
どこかに落としたのか見つからなかった。
仕方なく、車窓から景色を眺めて
電車に揺られた。
例の駅に電車が停車すると、
僕は反対側のホームの端を見つめる。
だが、そこに唯さんがいるはずもなく…
電車はそのまま僕の最寄り駅に到着した。
ピッ ピッ
その機械的なリズムに従いながら、
僕も前に倣って改札を出ようとする。
でも、目の前の女性のICカードが
残高不足だったようで足止めをくらった。
