
イジワルな彼女。
第8章 絆-キズナ-
案内された部屋に3人で入り、
ドリンクを注文する。
少し経つと、ドアがノックされ
ドリンクが運ばれてきたが…
僕はその店員から好奇の目を感じた。
店員が退出すると、
一旦ドアを開けスマホを片手に外へ出る。
僕は通話の振りをしながら
店員がいないのを確認し、部屋に入った。
「…小日向、ほんとごめんね」
原が申し訳なさそうな顔で僕に謝った。
「全然、気にすんなって。えっと…
それで二人とも自分の気持ち?とか、
考えとかちゃんと話せたのか?」
「…」
「…俺はまぁまぁ?かな」
亮太はそう答えたが、
2人の表情はほぼ同じで浮かない顔だ。
「うーん…ぶっちゃけ聞くけど、
別れた原因は?」
「…まぁ、自然消滅的な?」
「亮太、濁すなって」
「…俺がやらかして、
それにさつきがキレて喧嘩になった」
「………」
ずっと黙りこんだままの原に、
僕は問いかける。
「原はそれが許せなかった?」
「…うん」
「ほんと今更だけど…
俺が悪かった。ごめん」
「今更じゃないよ…」
「…ごめん」
「亮太は…今更だって思ってたんだね」
涙声になりながら、原が呟く。
「…」
「…それなら、もうちゃんと別れよ?」
「…俺から別れようなんて言えねーし。
そんな資格ないだろ」
「…」
「でも、さつきが別れたいなら…
俺はさつきのしたいようにして欲しい」
「ずるいよ…」
「…」
「亮太は…もう私とは別れたい?」
「…」
「嫌いなら、もう別れた方がいいじゃん!」
「嫌いじゃねーよ!」
「うそ」
「嫌いだったら、そもそも付き合わねーし」
「それだけ?」
「…好きだから付き合ってきたんだろ?」
「でも、すぐ喧嘩になるじゃん」
「…それはそうだけど。
でも、いつも元に戻ったし」
「じゃあ何で今回は…戻れなかったの?」
原の目に涙が溢れる。
「…泣くなって」
ぐすっ という音がした。
「元に戻れるなら、俺も戻りたい」
「…」
「ほんとにごめん!
傷つけてばっかでごめん。
もし許してくれるなら別れんのやめて…
てか、別れたくねーんだよ!!!」
「………うるさいよ。ばか」
部屋中に亮太の声が響き渡ると、
ぼそっと原が囁いた。
初めて聞く原の弱々しい声。
だが言葉とは裏腹に…
原は耳まで赤くして、顔を手で隠した。
