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イジワルな彼女。

第7章 茜-アカネ-


「いってきます」
「いってらっしゃい」


久々のラッシュに僕はげんなりしつつも、
何とかイヤホンから流れる音楽で
気を紛らわしながら電車に揺られる。

学校に到着すると、
下駄箱で後ろから声を掛けられた。

「小日向くん?」

振り返ると、声の主は佐々木だった。

「ん?」

「あ、おはよう!髪切ったんだね!」

「あぁ…」

先日、
佐々木には情けない姿を晒していたので
僕はなるべく目を合わせずに応えた。

「あれから体調は大丈夫?」

「もう平気。ありがとな」

心配してくれた佐々木には悪いと
思いつつ、僕はそっけない返事をしながら
佐々木と共に教室へ向かった。

「昨日の雷すごかったよね」

「…」

「小日向くん?」

「あー、まじそれな」

「今日は無事に電車動いてよかったぁ」

「…むしろ、今日止まってくれたら
よかったのに」

つい、僕の本音がこぼれた。

「えー?」

「…ほら、校長の話って長くね?」

咄嗟に出てきた言葉だったが、

「確かに!」

佐々木の賛同を得ることが出来た。


佐々木真子。
彼女とは同じクラスで地元も一緒だが、
特別仲がいい訳ではない。
途中で佐々木が転校してきたから、
幼なじみって感じでもないし。
それに…

「お?珍しい組み合わせだね?」

教室の中から、耳馴染みのある声がした。

「…」

「山岡くん、おはよう」
「うぃーっす!」

僕は亮太をスルーし、自分の席につく。
周りを見渡すと、
いつもの顔ぶれが揃っていて
僕は何だか嬉しかった。

一際楽しそうな女子たちの真ん中で、
笑顔の原と目が合った。
原は僕に軽く目配せをし、
そのまま何事もなく女子の群れに戻る。
僕も周りに気づかれないように、
そっと目を逸らした。

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