
イジワルな彼女。
第2章 歩-アユム-
重い参考書やテキストをリュックに入れ、
帰ろうとした所を呼び止められた。
「小日向くん、ちょっといいかなぁ?」
(今日だったか…)
心の中でそう呟きながら、声の主を見た。
肩につくかつかないかくらいの髪に、
ストライプ柄のシャツ。ブラウスかな?
なぜか衿が後ろにズレている。
街中でもよく見掛ける姿だけど、
目の前の彼女にはあまり似合わない。
僕はそんなことを考えながら、
「なっちゃん、またあのこと?
それなら今日はパスで!」
そう笑顔で告げると、
左腕をパシッと叩かれた。
「もーう、なっちゃんじゃないでしょ!
なつみ セ・ン・セ・イ!」
すっかりお決まりの返しだ。
「あ、菜摘せんせー!
今日はこのあと用事があるので…
では、失礼します!」
軽く会釈をしてから素早く振り返り
その場を立ち去ろうと試みたが、
後ろからリュックのひもを引っ張られ
僕の逃亡は呆気なく失敗に終わった。
