
イジワルな彼女。
第2章 歩-アユム-
菜摘先生に連れられ空き教室に入る。
僕はすぐにでも帰れるように、
入口近くの壁に寄りかかった。
「なっちゃん、
亮太はもうココ来るつもりないよ?
だからそろそろ諦めてさ。
なっちゃんの気持ちも分かるけどね」
「そうね。
山岡くんのことも心配なんだけど…」
ん?
菜摘先生の予想外の切り返しに
少し戸惑ったが、
菜摘先生のターゲットが誰なのか
僕はすぐに気付いたので、
なるべく申し訳なさそうに答えた。
「あー、俺か。
先生ごめんね!
こないだの模試もあれだったしさぁ…
やっぱり俺には○●大は厳しいよ」
すかさず菜摘先生が反論する。
「そんなことない!
第一志望の●大も、
小日向くんの行きたい大学だから
もちろん先生は反対しない。
でもね…小日向くんの学力なら、
○●大も充分に狙えるし
施設も充実してるからオススメなの」
○●大は菜摘先生の母校だ。
この予備校に入ってちょっとした頃、
こうやって菜摘先生に進学先を○●大へ
変更しないかと打診を受けた。
○●大の良さなんて、僕にだって分かる。
だから菜摘先生を納得させるために…
違う。
ほんとは自分の実力が知りたくて、
第二志望として○●大を進路先に加えた。
でも前回の模試の結果はC判定。
もっと勉強すれば、
もしかしたら合格出来るのかもしれない。
でも僕は、そこそこのレールでいいんだ。
…難しいレールの上を歩くのは、
もうやめたから。
