
イジワルな彼女。
第5章 巡-メグル-
頭の中が唯さんでいっぱいで、
日常生活もままならない程だとは…。
自分でも信じられなかった。
「…唯さん、今日は大丈夫なのか?
また元カレに絡まれたら危ないよな」
昨日は何とか逃げきれたが、
元カレが唯さんに付き纏う可能性は
ゼロとは言いきれないだろう。
ふと、大野さんの
何ともいえない表情が僕の脳裏に蘇る。
「…」
僕も元カレと同じようなものなのか?
寧ろ唯さんと付き合ってもいないのに
大野さんから唯さんの話を聞き出そうと
必死な僕の方が、よっぽど
危険人物かもしれない。
昨日のことも、
唯さんのことも…もう忘れよう。
唯さんに何かあったとしても、
僕は何の役にも立たない通行人Aだ。
そもそも本来ならば、
僕は唯さんと出逢うことなんてない。
僕は、どこにでもいる
ごく普通の高校生なのだから…。
