
イジワルな彼女。
第5章 巡-メグル-
「あの?大丈夫!?…ですか?」
女の子の声がする。
「あ、あのっ!小日向くん?」
僕はその声で目を開き
顔を上げると、目を細めながら
僕を呼ぶ声の主にピントを合わせた。
「…佐々木?」
そう僕が呟くと、
不安げな顔をしながら
「大丈夫?立てる?」
その子はこっちに近づいてくる。
「あぁ、大丈夫大丈夫!」
慌てて僕は立ち上がった。
「よかった。
でも、ちょっと顔色が悪い気が…」
「まじ?あー…たぶん夏バテ」
痛いところを突かれた僕は、
苦笑いではぐらかす。
「そうなんだ」
「佐々木も気をつけて!」
「…うん。ありがとう」
「…」
「…」
ほんの少しの沈黙。
それすらも気まずかった僕は、
「じゃあ、俺帰るわ。
ありがとな。また学校で」
「あ、うん。またね…」
佐々木からの返事を聞く前に、
その場から立ち去った。
「お大事に!」
後ろからやや大きめの声を掛けられたが、
僕は振り返らずにそのまま歩いた。
