
イジワルな彼女。
第4章 薫-カオル-
僕は必死に言葉を選びながら、
唯さんとの出逢いの経緯を説明した。
説明をしているうちに、彼女…
胸につけているネームタグから"大野さん"
と判明。
大野さんの様子が、さっきまでとは
悪い意味で変わっていくのが分かった。
(相手を間違えたか…)
僕は少し後悔していたが、
藁にもすがる思いでここに来て
お目当ての大野さんに話を聞くことが
出来たのだから、彼女は何も悪くない。
むしろ大野さんは、
仕事も気遣いも出来る人だと感じた。
昨日僕と唯さんが一緒にいたのを見て、
いずれ僕がここを訪ねてくるのも
きっと予想していたのだろう。
だから大野さんは
自分の担当テーブルではない僕の所へ
わざわざ来てくれたり、
咄嗟の判断で水まで持ってきてくれた。
僕から大野さんに声を掛けやすい環境を
自然に作ってくれたのだ。
一通り説明を終えた僕は、
「いただきます」
そう言って、水を半分ほど飲んだ。
そしてコップをそっとテーブルに戻し、
「ご馳走様でした!
お会計、お願いします」
テーブル脇の伝票を素早く手に取り、
その場から立ち上がった。
