
イジワルな彼女。
第4章 薫-カオル-
「失礼します」
彼女は、僕が頼んでいない水を
テーブルに置いた。
そして、
「唯さん、もう今日は来ないかと…」
彼女は申し訳なさそうに
僕の知りたいことを教えてくれた。
でも、何故だろう。
さっきまでの彼女の声より
何となく、トーンが明るくなったように
僕には聞こえた。
「………そうなんですね、
ありがとうございます」
少し間が出来てしまったが、
僕は彼女にお礼の言葉をかける。
「唯さん、ここにはよく来るんですか?」
僕はすかさず、一番聞きたかったことを
続けて問いかけてみた。
「昨日、お客さまと一緒に来られたのが…
いつぶりだったかな?
うーん…」
トレーを両手で抱え込み、
目線をやや斜め上に向けながら
彼女は記憶をたどっている様子だ。
「でも、ほんと思い出せないくらい
久しぶりだったんですよ!」
少しして、
小声だが彼女が興奮気味に答えた。
すると今度は、
「失礼ですが…
唯さんとはどういったご関係ですか?」
そう呟く彼女の目は、きらきらして見える。
「…」
僕は右手で軽く髪の毛をくしゃっとし、
苦笑いをしてみせた。
