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こんな恋って、アリですか?

第2章 出逢い


  ふたりは駅から続く大通りを少し歩き、
  ショップや飲食店が軒を連ねる横道に入る。

  今年は猛暑だったが、9月も終わりに近づくと
  急に涼しくなってきていた。

  半袖で歩いている人はちらほらで、
  ほとんどが長袖か上着を羽織っている。

  夜中になり、家路に着く人々の中で綱吉は
  急に立ち止まった。


「どうした?」


  細い路地の奥にぽっかりと穴を開けた
  場所があった。

  その穴は地下の店へ続く階段になっている。


  ─── そこが、クラブ ”コミットプレイス”。


  綱吉は、店の前でオーナーと従業員が何やら
  話しているのを目に留めた。

  従業員はすぐに階段を下りて行ったが、
  オーナーはそのままそこで煙草に火を点ける。

  綱吉に気付いたオーナーは、
  精悍な顔立ちに綱吉のよく知っている
  皮肉気な笑みを浮かべて、薄く煙を吐いた。 

 
「ちょっと待ってて」


  綱吉は柊を残し、
  店の前で煙草を燻らせるオーナー ───
  神代 慧(かみしろ さとし)に近寄っていく。

  綱吉が知る限り、いつも高価そうなスーツを
  着ていたがこの日もやはりブランド物らしい
  ダークスーツを着ている。

  普段着のチェックのシャツにジーンズという格好の
  綱吉だったが臆することなどない。


「なに、ニヤついてんの」

「べつにぃ ─── アパート、火事にあったん
 だってな。今、田中が見に行ってきた」


  神代は煙を吐いた。


「また、俺ん家のゲストルーム貸してやろうか」


  前と変わってないぞ、と、神代はさらに
  ニヤニヤ笑う。

  綱吉は顔をしかめてそっぽを向いた。

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