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こんな恋って、アリですか?

第2章 出逢い


「そう思われても構わない」

  変な奴ぅ、と綱吉は笑う。
  しかし答えた。

「つなよし。友達とかは”TUNA”って呼ぶ」

「つなよし君、ね……フルネームは?」

「じゃーな」

  綱吉は足早に歩き出す。
  男は彼女を引き止めようとその腕を掴んだ。
  振り向いた綱吉は男を思い切りにらみつけた。

「おいらのこと詮索すんな」

「判った。何も訊かない。名前はつなよしで、
 たった今住んでたアパートが火事で全焼したところ。
 泊まるあてもなけりゃ、金もない。それでいいか」

「まぁ、そんなとこかな」

  綱吉はきつい表情をゆるめ、
  自分の腕から男の手を外す。

「で、あんたの名前は?」

「柊、隆之介(ひいらぎ りゅうのすけ)」

  (う、わぁ ―― 時代劇にでも出てきそうな
   名前……)

「ふ~ん、柊さん。で、あなたはどうして俺に
 かまうの?」

  柊は眉尻を下げた情けない表情になる。
  迷いながら答えた。

「あの火事で見かけて……気になって。
 もしあそこに住んでるんだったら困ってるんじゃ
 ないかって……」

「ふ~ん、じゃ、柊さんって、困ってる人なら誰にでも
 声かけるんだぁ」

「あ、べ、別にオレは他意がある訳じゃない、から……」

  そう言うと、柊は耳まで顔を真赤にして
  俯いてしまった。

  根はかなりの純情青年らしい。

  そんな柊を綱吉はじぃーっと見つめて
  意地悪く言う。

「ふふふ……柊さんって可愛い」

  そして『オッケー』と小さく呟き、柊の腕へ自分の
  腕を絡めた。

「つなよしくん!」 

「もう当分の間、客は取らないつもりだったけど
 あんたで最後にする」

「??……」

「柊さんなら、俺のこと幾らで買ってくれる?」

「キ、キミはそういう……だったのか……?」

「あら、失望、させちゃった?」 

「い、いや……なら、言い値で買おう。ただ現金は
 持ち歩かない主義でね。僕の家まで来る気はあるか」

  柊は挑むような目線を返してくる。


「見ず知らずの俺なんか家にあげていいのー?
 有り金かっさらって逃げるかも」

「そうなったら見る目がなかったと諦めて泣き寝入り
 するさ」

「あんた面白いね。気に入った」


  お買い上げ有難うございます、と、
  綱吉はおどけてまた笑った。

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