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こんな恋って、アリですか?

第2章 出逢い

  自分の容貌が他人の目にはそれなりに見える事を
  綱吉は知っていた。

  眉は自然にカーヴを描き、
  くっきりとした二重の大きな目を
  長い睫毛が囲んでいる。
  細い鼻筋、形のよい唇は少し赤い。
  白く小さな顔にそれらがバランスよく収まっている。

  肩にはつかない程度に伸ばして、
  1度も染めた事のない艶やかな黒髪。

  黒い細身のジーンズにノーブランドのTシャツ
  という服装が返って彼の顔立ちの良さを
  際立たせていた。


「あ、そんなぞんざいな言い方はないか。
 すげー煙で死ぬとこだった。ありがと」

「少しでも煙吸ったんなら医者行った方がいい」

「体は全然へーき。でも懐の方がな……」


  駅前にある大きなデジタル時計は午前零時半を
  指していた。

  綱吉はジーンズの後ろポケットから財布を出して
  中身を調べる。

  かんばしくなく、眉根を寄せた。


「……やっぱ吉牛にでもすりゃよかったな……」


  ぶつぶつ言いながら、財布をしまう。


「さぁて、どうすっかなぁ……」

「──  大家か仲介の不動産屋に相談してみたら
 どうだい? こういう時の為に火災保険とか
 入ってるはずだし、すぐに現金は入らなくても
 泊まるところぐらいは提供してくれるだろう」

「へぇ、そっか、大家か……考えもしなかった」


  綱吉は感心したように男を見上げた。

  肩をすくめる。


「けどそれ、あかんわ。おいら、間借り人やから」

「え ―― っ」

「あのアパートを借りてたのは、千明って幼なじみ
 なんだ。そいつがなんかオトコの家で暮らすって
 言うからさ、あのへや貸してもらったってワケ」
 ……下手したら実家に連絡されかねないし」

「もしかしたら……家出、してるのか」

「あんたに関係ねぇだろっ」


  とたんに綱吉は不機嫌な表情になる。


「んじゃ、おいら行くわ」


  話しはもう終わった、と、ばかりに綱吉は
  立ち上がり、すたすたと歩き出す。

  男はあわてて後を追った。


「泊まる所、ないんだろう」

「これから見つける」

「金もない」

「だからって何さ。何かあんたに迷惑でもかけた?」

「……あの、名前、教えてくれないか」

「今までの話しの流れでいきなり、ナンパか?
 信じらんねぇ……」



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