
こんな恋って、アリですか?
第2章 出逢い
炎が見えなくなっても、残り火を完全に消すため
消防車は放水を止めず、黒く焦げた建物は次に
水浸しになった。
燃え残ったものがあったとしても、
到底使い物にはならないだろう。
綱吉は群集から離れ、ふらふらと歩き出した。
駅前の大通りに出ると花壇のレンガにしゃがみこむ
何も考えられない。
何もかもが無くなってしまった。
寝床も、服もベッドも、少しあった金も。
あの部屋にあった物だけが綱吉の全てだった。
(……どうしよう、これから……)
うなだれる綱吉の目の前を野次馬が火事を見ようと
通り過ぎる。
(もう火、消えてるのにな)
他人事のように思う綱吉に、すっと影がかかる。
誰かが前に立ち止まったのだ。
「……あのアパートに住んでたのか?」
頭の上から男の声が降ってくる。
綱吉は誰だったろう? と、訝しんだが、
どうでも良くなり、ロクに顔も見ず投げやりに
答えた。
「まぁね……火、消えたみたいだけど興味あるんなら
見てくれば」
「消えたのは知ってる。見てたから」
「……あんた、なに?」
綱吉はやっと男を見上げた。
背が高かった。180センチ以上はある。
ガタイもかなりイイ。
綱吉は155センチあるかないかなので
並んで歩きたくない相手だった。
キースヘリングのTシャツに、
ヴィンテージ風のジーンズが長い足に
良く似合っている。
強面 ――― というのか、
全体的にごっつい顔立ちの男だった。
一重なのにわりと大きく見える目、薄い唇。
えらも頬も張っておらず、
その代わり鼻は高く通っていた。
眉が目尻に向かって上がっているのが
凛々しさを与えている。
綱吉が最初に認識したのは
自分向きの”客ではない” という事だった。
(ふぅ~ん……まぁ、男前だな。
ごく普通のリーマン、には見えへんけど)
何を思われているかも知らず、
男は綱吉の隣に座った。
「さっき、火事のところで腕つかんだの
覚えてないか?」
「あぁ。下がれって」
「そう、それ」
「俺に何か用?」
綱吉は男をじっと見つめる。
彼が微かに赤くなるのが判った。
消防車は放水を止めず、黒く焦げた建物は次に
水浸しになった。
燃え残ったものがあったとしても、
到底使い物にはならないだろう。
綱吉は群集から離れ、ふらふらと歩き出した。
駅前の大通りに出ると花壇のレンガにしゃがみこむ
何も考えられない。
何もかもが無くなってしまった。
寝床も、服もベッドも、少しあった金も。
あの部屋にあった物だけが綱吉の全てだった。
(……どうしよう、これから……)
うなだれる綱吉の目の前を野次馬が火事を見ようと
通り過ぎる。
(もう火、消えてるのにな)
他人事のように思う綱吉に、すっと影がかかる。
誰かが前に立ち止まったのだ。
「……あのアパートに住んでたのか?」
頭の上から男の声が降ってくる。
綱吉は誰だったろう? と、訝しんだが、
どうでも良くなり、ロクに顔も見ず投げやりに
答えた。
「まぁね……火、消えたみたいだけど興味あるんなら
見てくれば」
「消えたのは知ってる。見てたから」
「……あんた、なに?」
綱吉はやっと男を見上げた。
背が高かった。180センチ以上はある。
ガタイもかなりイイ。
綱吉は155センチあるかないかなので
並んで歩きたくない相手だった。
キースヘリングのTシャツに、
ヴィンテージ風のジーンズが長い足に
良く似合っている。
強面 ――― というのか、
全体的にごっつい顔立ちの男だった。
一重なのにわりと大きく見える目、薄い唇。
えらも頬も張っておらず、
その代わり鼻は高く通っていた。
眉が目尻に向かって上がっているのが
凛々しさを与えている。
綱吉が最初に認識したのは
自分向きの”客ではない” という事だった。
(ふぅ~ん……まぁ、男前だな。
ごく普通のリーマン、には見えへんけど)
何を思われているかも知らず、
男は綱吉の隣に座った。
「さっき、火事のところで腕つかんだの
覚えてないか?」
「あぁ。下がれって」
「そう、それ」
「俺に何か用?」
綱吉は男をじっと見つめる。
彼が微かに赤くなるのが判った。
