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こんな恋って、アリですか?

第2章 出逢い


「う、そ……」


  消防車のホースの先からは大量の水が吹き出し、
  それは俺のアパートめがけて勢いよくかけられている

  見慣れたアパートの2階の端の部屋からは
  凄い勢いで炎が燃え上がり、
  バキバキと音を立ててあっという間に
  アパートの全室へと広がっていく

  俺は少し離れたとこからその光景を
  ただ見つめているしか出来ない

  動きたくても足がすくんで一歩も
  前に踏み出せないのだ


 ***  ***  ***


  炎と黒煙を綱吉はただ見つめていた。

  ものが焼けるひどい臭いが充満している。

  熱気を頬に感じた。


「おい、危ないぞ下がれ!」


  誰かに怒鳴られ、腕をつかまれて野次馬に呑まれる

  それでも綱吉は立ち尽くしたまま、目を逸らさない。

  逸らせない。


  せまいけれど案外快適だった自分の部屋の
  窓ガラスが割れ、炎が噴き出す。

  消防車が来て消火活動を始める頃にはアパート中が
  火の海になっていた。

  周りの声が綱吉の耳に入る。


(……火元は、空き部屋らしいよ)

(じゃ、放火?)

(ケガ人、とかはいるのかな?)

(でも半焼じゃなくて良かったよ……全焼なら保険、
 全額下りるから)

(みんな逃げてケガした人いないらしいよ)

(不幸中の幸い、ってやつだな……)


  小さな2階建てのアパートで、
  綱吉が暮らしていたのは2階の*側の角部屋だった

  火元の真上で、外から見る限り、
  何もかも燃えてしまった。

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