
一之瀬姉弟の日常
第4章 Broken Heart~雨に混ざる涙~
「笑えない」
私は──持っていた傘を放り投げて優也を抱きしめる。優也の体は雨で冷えきっていた。普段はイタズラばかりする困った弟とは思えない。本当に世話の妬ける奴だ。
だけどもっと世話が妬けるのは私だ。優也が小さい頃に公園で白つめ草の冠を作って言ってくれた言葉。“大きくなったらお姉ちゃんを守って幸せにしてあげるんだ”十三年も前のことを未だに信じていたのだから。
後で少女漫画を読んで知った。白つめ草は英語でclover(クローバー)。C-(She)lover(シーラバー)で“彼女は恋人”だと。五歳の優也がそんなこと考えているわけはないのだけれど。
「姉……貴がやっぱ一番だな」
優也がふと呟く。がたがたと震えている。それは私にも伝わってきた。私からも涙が零れ落ちた。そして止まらなくなる。本当は一番困った奴で、どうしようもないのは私だ。失恋話を聞いて、封印してたはずの想いが溢れ出すのだから。だけど私たちは双子。両親が同じの正真正銘の姉弟。世の中では有り得ない。有り得るのは少女漫画の世界の中だけ。世間体とかしがらみが現実世界にはあるのだから。
私と優也の静かな泣き声は、雨の音にかき消された。涙は、雨に混ざって地に落ちた。
私は──持っていた傘を放り投げて優也を抱きしめる。優也の体は雨で冷えきっていた。普段はイタズラばかりする困った弟とは思えない。本当に世話の妬ける奴だ。
だけどもっと世話が妬けるのは私だ。優也が小さい頃に公園で白つめ草の冠を作って言ってくれた言葉。“大きくなったらお姉ちゃんを守って幸せにしてあげるんだ”十三年も前のことを未だに信じていたのだから。
後で少女漫画を読んで知った。白つめ草は英語でclover(クローバー)。C-(She)lover(シーラバー)で“彼女は恋人”だと。五歳の優也がそんなこと考えているわけはないのだけれど。
「姉……貴がやっぱ一番だな」
優也がふと呟く。がたがたと震えている。それは私にも伝わってきた。私からも涙が零れ落ちた。そして止まらなくなる。本当は一番困った奴で、どうしようもないのは私だ。失恋話を聞いて、封印してたはずの想いが溢れ出すのだから。だけど私たちは双子。両親が同じの正真正銘の姉弟。世の中では有り得ない。有り得るのは少女漫画の世界の中だけ。世間体とかしがらみが現実世界にはあるのだから。
私と優也の静かな泣き声は、雨の音にかき消された。涙は、雨に混ざって地に落ちた。
