テキストサイズ

キラキラ

第30章 hungry 2

*********


待てど暮らせど、あれから、大野さんからのコンタクトはなかった。


大野さんの実技試験は無事に終わったのだろうか。
合格発表はいつだろうか。


とても気になるけれど、俺から連絡をとる気には、さすがになれなかった。


俺の言葉に対し、大野さんがどう思ったのか全く読めないせいだ。

全力で否定にかかられてるかもしれない。
気持ち悪いと思われたかもしれない。

もしそうならば、自ら大野さんの冷たい視線を浴びにいくほど、俺はマゾじゃない。


……勢いで気持ちをはきだしてしまったのはいいが、そのあと起こり得る事態に対し、ノープランだったのは、失敗だったかも……。


現状は確かに、変わったかもしれないけど。

告白してしまったあとの方がはっきりいって、辛い。

大野さんがどうでてくるか、わからないこの宙ぶらりんな状況は、想像以上にきつかった。



「はぁ……」


ベッドで丸くなり、キリキリする胃を押さえる。


サボりにきてるのに、ほんとに調子悪くなってりゃ世話ないよな……。


毎日普通の顔をして、ギリギリまで頑張っていたけど、日をおうごとに、一向に鳴らないスマホに絶望しか感じなくなり、俺は保健室に入り浸った。


俺の様子で、全てを察したのか、松潤は何も聞かず約束通りベッドを貸してくれて。


午前中一時間、とか、午後一時間、とか過ごしたら、適当に教室に帰っていたが、今日は朝からずっと保健室にいる。

胃が痛くて、気持ち悪いせいだ。



「……おまえ、ほんとに、具合悪そうだな」


気遣う声に顔をあげたら、ベッド脇に立っていた松潤が、身を屈め、俺の額に大きな手のひらをあてた。

そのぬくもりに思わず泣きそうになり、俺は、ふいっとそっぽをむいた。



「……胃が痛い。薬」

「あほ。保健室では投薬はできねぇ」


そのまま数回髪を撫でられるのが気持ちよくて、俺は黙ったままじっとしてた。



「で?あれから連絡あったのか」

「……なんにも」

「そうか」

「やっぱ、好きだなんて言わなきゃよかった……」

「……そんなことねぇだろ」


松潤は優しい声で否定した。


「あのままだと、お前は前にも後ろにも進めなかった。結果はどうあれ、今のお前は、ちゃんと前に進んでる。違うか?」



ストーリーメニュー

TOPTOPへ