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キラキラ

第30章 hungry 2


「そうですね…」



だーかーらー。

大野さんは、そうやって、爆弾をボンボン投げてくるけど、俺、回収しきれないって……。


また胸が苦しくなってきた。


大野さん……あなた、どういうつもりで、そんなこと言ってるの?

天然なら、たちが悪いよ。


押し黙った俺に、顔をあげた大野さんは、


「櫻井?」


と、言って、戸惑うような顔をした。


「どうしたの?」


……ねえ。松潤。
言ってもいいよな?



「大野さん」

「ん?」


ずっと我慢してきたけど……。
今、言わなかったら、俺……後悔しそうだから。

こんなに爆弾投下してくる人の横に、何食わぬ顔しているのは無理だわ。

かといって、会わないでいるのもできそうにないから。
自分で、変えるしかない。


「俺ね、大野さん」



ほんとは俺……優勝したら言おうと思ってた。
負けちゃったから、やめようと思ったけどさ。

……言っちゃうよ。



「うん」

「俺……」

「…………?」

「俺」



緊張のあまり、土壇場で俺が言い淀む様子に、なにかを察したのか、大野さんが少しだけ真面目な顔になった。


「……櫻井?……どうし……」

「……好きです」

「…………」

「あなたが……好きです」


「……え……」


「すみません……言わないでいることに耐えれなくなった」


俺はうつむいた。

大野さんの顔が見れない。
どんな顔してるんだろう。


いたたまれなくなり、そのまま立ち上がった。


「気持ち悪いこといってすみませんでした。明日試験頑張ってきてください!」


早口で言って、ペコリと礼をする。

そして玄関に走り、弾丸のように靴を履き、階段を静かにかけおりた。


「あら……帰るの?」


ヨシノさんが、びっくりしたような顔で俺を見るから、俺はヨシノさんにも礼をした。


「すみません。急用思い出したので帰ります。カフェオレごちそうさまでした!」

「さとちゃんは?もしかしてまだ寝てるの?」

「いえ」


それ以上言えなかった。

短く答えて、俺はマッハで店を出た。



すげー早足で駅まで歩いた。

途中何回かふりかえったけど、目に入るのは街灯に照らされる暗くのびる夜道。


追いかけてもこない。


……それが答えだと……思った。

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