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キラキラ

第30章 hungry 2


ドクン……っと心臓がなった。

上目遣いで、だめ?ときいてくる大野さんの表情が、ドストライクで俺をいたぶってくる。


くっそー!!
その顔!
俺を試してるとしか思えねぇしっ?!


俺は、挙動不審になりながら、しどろもどろと答えた。


「だ……ダメじゃ……ないですけど……」

「良かった。ねぇ、試合どんなだったか聞かせてよ」


ニッコリ笑う大野さんを前に、俺は白旗をあげて、ふらふらとその場に座り込んだ。


このフラットな対応に、思わず忘れそうになるが、俺は1ヶ月ほど前に、大野さんを抱きしめたはずだ。

それについては、大野さんはどう感じているのだろうか。
何気にスルーされてる気がするのだが……。


このまま何事もなかったことにしていいのだろうか。

……いや、よくないよな……。


モヤモヤとしながらも、大野さんに促されるままに、俺は今日の試合の様子を話した。

大野さんが相槌をうちながら、楽しそうに聞いてくれるから、次第に俺も調子にのって、熱をこめながら雅紀とのコンビプレーの気持ちよさなんかを話した。



「わかるわかる。なんか、通じあう瞬間みたいなのがあるんだよね」

「そーなんですよ!時々俺、こいつとは前世夫婦だったんじゃね?なんて思うことありますよ」

「ね。喋らなくても伝わる、みたいなね。…懐かしい」

「え…ちなみに、大野さんはポジションはどこだったんですか?」

「…俺は、二宮と一緒かな」



ふぅん……ふわふわしてるから、司令塔ってイメージじゃないのに…なんか意外。

…と思ってるのが顔に出たのだろうか。
大野さんが、ジロリと俺を見つめた。


「なに?意外って顔してるじゃん」

「いやっ…!そんな!」

「司令塔なんてできんの?って思った?」

「断じてそんなこと!」


やべーっ!
表情読まれた!!


慌てまくって否定すると、大野さんは、しばらく黙ったあと、我慢できないというように、ぷくくっと吹き出した。


……怒らせたかと思った


ホッとした俺に、大野さんは、おかしそうに笑い転げてる。


「……昔、部員のみんなによく言われた。見た目とプレー姿のギャップがすごいって」

「……そうですか」

「……櫻井と一緒に試合してみたかったな…」


ポツリと大野さんが呟いた。

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