
キラキラ
第30章 hungry 2
……大野さん、ガチ寝じゃん……
部屋に入ってきた他人にも気がつかないで、熟睡中だ。
苦笑して、ローテーブルに、そっとトレーをおく。
起こさないように、大野さんからちょっと離れたところにゆっくりと座った。
「……おお……あったけー……」
フローリングと思っていたそこは、床暖房が入ってるのか、お尻がほかほかした。
大野さんは、ブランケットもかぶらずに、万歳と大の字で寝ているが、これだけあたたかかったら、風邪もひかないな、と思った。
「…………」
……ちょっとだけ、にじり寄り、大野さんの寝顔を見つめた。
長いまつげに、すっと通った鼻筋。
白い肌は、すべすべしていて、肌荒れとは無縁っぽい。
柔らかそうな前髪が少し乱れていて、なおそうと思わず手を伸ばしかけ、あわてて思いとどまった。
ダメダメ。
もし今、大野さんの目が開いたら、俺、変態じゃん……!
少しだけあいた桜色の唇から、すうすうと漏れる寝息。
「……」
キレーだな……。
ここには、全く飾らない、そのまんまの大野さんがいた。
このままいつまでも見ていられると思った。
でも……どうしよう。
起こした方がいいのかな。
俺を待ってたっていってくれてたし……。
ヨシノさんのカフェオレも冷めちゃうし……。
どうしよう、どうしよう、と逡巡していると、
「……おわっ」
突如、結構なボリュームでスマホが鳴り出した。
あわてて、ポケットからとりだしてタップする。
発信主は、雅紀。
立ちあがり、部屋の隅に移動して、モシモシ、と潜めた声を出した。
『あ、翔ちゃん?今、いい?』
「お……おお。なに?」
『二宮が。どーしても翔ちゃんに謝りたいって』
「え?なんで?」
『ちょっとかわるね』
言って、電話口でゴソゴソ何やらやり取りしてる気配がした。
俺は、スマホを持ったまま振り返って、大野さんを見た。
すると、大野さんは、ムックリ起き上がって、両手でごしごし目をこすってる。
……げ、起こした?!
慌ててる俺に気付き、大野さんはぼんやりした顔をこちらに向け、ふわっと微笑んだ。
