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キラキラ

第29章 バースト7


ふわりと、心が軽くなる。

分かっていたことでも、言葉にしてくれないと……やっぱり不安なんだ。

どうしたって女の子には勝てない、と、後ろ向きな想いに陥ってた俺を、


『俺にはおまえだけ』


……翔はたった一言で、すくいあげてくれた。


俺は、翔の胸で、ずっと泣いた。
ここ数日の、モヤモヤを全て押し流してくれるような、浄化するような涙だった。

翔は、俺が落ち着くまで、ずっとずっと抱き締めてくれていた。

好きだ、と。
愛してる、と。

囁きながら。







翔の腕の中で、ぐっすり眠った次の日の朝。

酒も抜け、頭痛もおさまり、体もなんとか動くようになった。

リビングで、大野家の人々と朝食後の紅茶を飲んでいたら、ピンポーンと、インターホンがなる。


「相葉くんが来たよ」


画面をみた翔が、かずに声をかけた。


「……あれ?11時の約束じゃなかったっけ?」


かずは、あわててカップに入ってた残りの紅茶を飲み干し、立ち上がった。
そうして、自室にバタバタ入ってゆく。

出かける時間を間違えるなんて、かずにしたら、珍しいな、そんな風に思っていたら、

「少し早く来ちゃいました」

と、雅紀は照れくさそうにリビングに入ってきた。


雅紀に怒鳴られた日が遠い昔のことのようだけど、ほんの二日前なんだ。

ソファーに座ったまま、入り口に立ってる雅紀を見つめる。
俺と目が合うと、雅紀は、心配そうな顔になり、歩み寄ってきた。


「……体、平気?」

「……おう」

「こないだはごめん。……俺、言い過ぎた」


しょんぼりして、頭を下げる雅紀に、俺は、首を振る。


「雅紀は正しいことを言ったんだ。謝る必要なんてねぇだろ……」

「でも……」

「おかげで、俺も目が覚めた」

「……潤……」

「怒ってくれてありがとう……」

「……」


そこへ、雅紀の分の紅茶をいれてきた翔が、苦笑いして口を挟んだ。


「こら潤。相葉くん、今からかずと出かけんだろ。泣かしてどーすんだよ」


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