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キラキラ

第29章 バースト7


「最初に言っとくけど。……その事に関しては、俺は怒ってないからな」

「……」


俺の頬に添わせた温かい翔の手。
その手に力がこめられ、こっちを見ろとばかりに、俺の顎が上がる。

咄嗟に目をそらしたら、翔の唇がおちてきた。
その感覚が、柔らかくて優しくて。

翔の黒い艶やかな瞳が、俺を見つめてる。
穏やかな口調で、翔は言う。


「俺たちは、周りに明け透けに言える関係じゃない。それはしょうがないことだと思う。それが、少数派が、周りとうまく暮らしてゆくための術だと、俺も思うから」

「……」

「そして、多分だけど、おまえは俺を思って、関係を否定しただろ。どうせ俺に迷惑がかかるかもなんて、くだらねぇこと考えて」


「……」


「なぁ」


「……」


「……こら。泣きすぎだろ」


我慢しなきゃと思えば思うほど、涙腺がバカになったのか、あとからあとから涙が溢れだしてくる。

テレパスの能力もってんの、かずじゃん。
なんで、翔まで、俺の心がみえるわけ?


苦笑した翔の親指が俺の目尻を拭う。


「鼻水までだして。ビジュアル崩壊してるぞ、おまえ」

「……だって……」


手にしていたお椀とれんげを取り上げられ、俺は翔の温かな胸に抱き込まれた。

翔の香り。鼓動。温もり。

だめだ、やっぱり離したくない……
俺は、翔の背中にそっと手をまわす。

翔は、ぽつりと呟いた。


「……昨日、俺は狂いそうになった」

「…………」

「頼むから。一人でぐずぐず悩むな」

「……」

「俺には、お前だけだ。お前しかいらない」

「……っ……」

「……他に聞きたいことは?」

「………っ……俺で……いいの?」

かすかすの声で尋ねたら、翔が、あきれたように笑った。


「おまえ、俺のこれ以上ないくらいの告白聞いてた?」


「だって……だって……翔の隣には、女の子があってるし……」


必死で訴えたら、翔はおもむろに体を離し、変な顔で俺を見た。


「……ひょっとして、昨日、駅前で俺を見た?」


俺は、正直にうなずいた。


「……見た………似合ってた……」


翔は、はぁ……どおりで……とため息をついて、再び俺を抱き締めた。


「……あいつらの彼氏の買い物につきあわされただけだよ。何度も言うけど、俺にはおまえだけだ」


「……うん……」




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