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キラキラ

第29章 バースト7


「え……」

「千葉方面に用事なんてあったのか?」


翔は、あくまで優しくたずねてくれる。
たぶん、俺を刺激しないように。

でも、自分の恋人が別の男といたんだ。
しかもどう考えても、車でしか行けない場所に、だ。

気にならないはずないよね……。

俺は、じっとお椀を見つめたままの姿勢で黙った。

だんまりの俺に、翔は、また優しく問うた。



「……あいつらに、無理矢理車に乗せられたのか」

「……ううん」

「じゃあ、なんか脅されたのか」

「……ううん」



小さく首を振り続けるだけで、何も言わない俺の手に、翔の手がそっと重なった。


「……冷たい手してるな」

「……」

「……潤」

「……」

「相葉くんに……少しだけ聞いたよ」

「……っ」


何を!?


思わず顔をあげたら、翔は、穏やかな顔で俺を見つめていた。
大きな瞳には、怒りの色も責める色もみえなくて、ただただ、俺を慈しむ色しかなくて。

俺は、戸惑いなから、ぎゅっとれんげを握りしめた。


「あいつに、ずっとつきまとわれてたって?」

「……うん」

「……言えよ。追い払ってやんのに」

「だって……風磨さんの友達だって……」

「そんなの関係ねーだろ……?風磨に遠慮してどうすんだよ」



でも。

確か、あの店で、従業員とウツミが喋っていた感じでは、風磨さんとは何の関わりもないと言っていた。

ああ……俺は最初から騙されていたんだな……。

情けないな。

じっと黙っていたら、翔の手がぎゅっと俺の手を握った。
そして、静かに言った。


「そんで……あの変態野郎に、俺との関係を否定したって…聞いた」

「…………!」


雅紀!!
あいつ、いらないことまで、ぺらぺら喋りやがって!!


顔色をなくした俺の頬に、翔の手が触れた。

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