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キラキラ

第29章 バースト7


この頭痛と気分の悪さは、二日酔いだという。


たまに大人が、「昨日は二日酔いでさんざんだった」、とか話してるのを聞いたことがあるが、まさか、自分が体験することになるとは思わなかった。


翔の胸でひとしきり泣いたら、メンタル面は少し落ち着いたけれど、次は、胸がどうにもこうにも苦しくなった。

これは、船酔いの10倍…いや、100倍かもしれない。

うずくまり、ぐったりしてる俺を、チカラで浮かした翔は、


「……ちょっと手荒なことするぞ」


と、俺をトイレにつれて行く。

そのまま翔の助けをかりて、吐いたら……大分楽になった。



「今日が土曜で良かった……ついでに今晩も泊まっていけよ」


酒臭いまま帰ったら、母さん心配するぜ?と、言われて。

翔の側にいてもいいのか、ずっとぐるぐる考えていた俺だが、あまりにしんどいから、ひとまず甘えることにした。


それから、翔は、俺を心配してくれるのか、朝からずっとつきっきりで枕元にいてくれる。

うつらうつらして目を覚ますたびに、枕元で読書をしている翔が、優しい眼差しで、大丈夫か、と問いかけてくれる。

その声音と、空気で、また安心して、とろとろ眠る。



時折冷たい手が額にのり、目をあけたら、かずが心配そうにのぞきこんでいた。

大丈夫……?

テレパスで問われて、うん……と頷いて。

……たくさん……話しかけてくれてありがとう、と伝えたら、気にしないで、と返してくれて、微笑んでまた眠る。



智さんも、様子を見にきてくれた。
水を飲め、と、ペットボトルにストローを差したものを口に近づけてくれて。

いらない、とやんわり拒否したら、ちょっとだけでも飲んでくれよ、と困った顔になり、それがおかしくて、……また少し笑えた。



夜にはだいぶ気分もましになった。

だけど、無茶苦茶に抱かれたダメージは大きく、いまだ体がいうことをきかない。

翔に体を起こしてもらい、ベッドに座ったまま、彼の作った夕飯を少しだけ口にした。


「うまいか」

「……うん」

「そっか。良かった」


嬉しそうに頬笑む翔を見てると、ああ……やっぱり好きだ、と思う。

この気持ちまで蓋をしてしまうのは、多分俺にはできない。





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