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キラキラ

第29章 バースト7


Jun



ものすごい頭痛と、気分の悪さと共に目覚めた。

ここはどこだ、と思うより先に、傍らにある温もりと香りで、自分の居場所を把握する。


……翔……


俺を抱き寄せるように、眠っている翔。
理知的な目は、閉じるととたんに幼さをもち、半分あいた口元も、子供のようで、いつもの姿とのギャップが、俺は好きだ。

……いや……好きだった。


「…………」


ゆらゆらと目の前が霞む。

可愛らしい女の子と並んで歩いてた姿が忘れられない。
笑顔が頭にこびりついて離れない。

恋人とかそんなんじゃないだろうことは、わかってる。
俺を嫌いになったわけでもないことも、わかってる。

でも……考えちゃうんだよ。
相手が俺だと、未来ってないじゃん。
周りにも公表できないじゃん。


…俺………翔にとって邪魔かもしれないなぁ


頬を熱い涙が流れた。


本人に確認したわけでもないのに、どうしようもなく後ろ向きな気持ちになってしまうのは、昨夜の記憶のせい。


体をそっと動かしたら、下半身がズキリと痛んだ。


……いてぇ……


何をされたのか。
何をいわれたのか。
……残念ながら覚えてる。


体を開かされながら、苦しくて無意識に発したSOSが、偶然にも、かずに届いたのか。

懸命に、どこにいるの、と。しっかり、と。話しかけ続けてくれていたことも覚えてる。

だけど、とどめとばかりに、口移しでビールを無理矢理に飲まされてからの、そのあとの記憶は曖昧だった。

今、ここにいるってことは、おそらく翔が来てくれたということなのだろうけれど。


…………どう思われただろう。


気をつけろよ、と言われてた相手に、まんまと食べられたなんて笑えないじゃないか。


「……ぅっ……く」


こうも悪いことが重なると、どの要素で泣いたらいいのかすら、分からない。

ズっと鼻をすすり上げると、その気配で、翔が目を覚ました。


「……っ……潤…………!」


とたん、ぎゅっと抱き寄せられた。


「翔…ぅ…」

「大丈夫か、どこか痛くないか」

「………っ…全部……痛い…………」


心も体も何もかも。


「痛いよぉ……」


たまらずに泣きじゃくる俺を、翔は黙って俺を抱きしめて、背中をさすってくれた。

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