
キラキラ
第29章 バースト7
いやにぼんやりしてると感じるのは、ショックだからなのかと思っていたけど、それだけではなさそうだ。
それは、智兄も同じく感じたようで。
二人で目をあわせてから、改めてゆっくり周りを見渡せば、飲みかけの缶ビールが机にある。
あいつらが酒を飲みながらコトに及ぼうとしたことが分かる。
つまりアルコールの香りがする潤も、無理矢理に飲まされた、と推測される。
「未成年に、何してくれてんだ……あいつらは」
智兄は、チッと舌打ちして、潤の額に手をやった。
潤は相変わらず、ぼんやりして目が虚ろだ。
つまり……酩酊状態なわけだ。
泣くでもなく。
喚くでもなく。
でもさっき、俺の顔を見て名前を呼んでくれた。
ぼーっとしてても、俺を認識してくれて良かった。
俺は、仄かに赤い潤の頬を優しく撫でて、智兄を見た。
「とりあえず……帰ろうよ。あいつらのことは、潤が判断力戻してからにしよう」
「……ん。分かった」
智兄が頷く。
一刻も早くシャワーをして、綺麗にしてやりたかった。
散らばってる潤の制服を着せてやってると、
「…………しょー」
呂律のまわらない潤が俺に抱きついてきた。
俺はそんな潤を抱きしめて、そのまま立ち上がる。
潤は、はぁ……っと大きく息をはき、俺の胸に顔を寄せて目を閉じた。
足早にその場を去ろうとしたら、宙に浮いたままの二人が慌てたように、
「あ……おいっ!」
と呼び止める。
このままにするな、ということなのだろう。
そのまま無視して智兄と店の外に出たけれど。
本来なら、すぐ飛べばいいのに、俺は潤を抱きしめたまま立ち尽くす。
怒りが体を包み、どうしようもなかった。
どうにか、押さえようと深呼吸を繰り返すが、集中すらできない。
耐えきれなくなり、ぐっと目を閉じ、一瞬だけチカラを飛ばした。
ドカンという音ともに、二人のものすごい絶叫がしたけれど。
「ま……しょーがねーか……」
そう呟いた智兄は、そのまましらんぷりをしてくれて。
カタカタ震える潤を抱きしめて、俺らは再び上空に飛んだ。
