
キラキラ
第29章 バースト7
泣きそうな顔のかずが、ハアハアと息をはずませながら、俺に向き直った。
「翔さん……いま、潤くんがどこにいるか知ってる?」
「…………」
そのかずの潤んだ目は、あきらかに悪い知らせの色を含んでた。
嫌な予感しかしない。
……俺はトクトク鳴り始めた心臓をつかみ、静かに首をふった。
「いや……昨日電話で話したけど、出かけるような話はしてなかった……」
「……あのね、さっきから途切れ途切れに、潤くんの声が聞こえるの」
テレパスの能力者であるかずは、強い想いをもって発信する心の声をきいてしまうと同時に、身近な人間のSOSもかぎ分ける。
実際、過去、相葉くんが、上級生に喧嘩をふっかけられて連れ去られたときも、かずは、敏感にその声を感じ取った……のだが。
「……途切れ途切れ……?」
俺は小さく繰り返した。
それってどういう状況なのか。
咄嗟に想像することを頭が拒否しかける。
けわしくなった俺の表情に、かずは、傍らの相葉くんの手をしっかりと握りしめて、必死な顔でコクコクと頷いた。
「意識が朦朧としてる……そんな感じ。ハッキリとした声じゃないんだ。俺も、集中して聞き分けないと分かんないくらい」
「……何て言ってるんだ?」
「たぶん、翔……って」
「………」
「……あと……いやだ……って聞こえる」
息を飲む。
カッと一瞬で血液が煮えたぎった気がした。
シンクのグラスがパリンと音をたてて砕けた。
何をどう考えても、悪いことしか浮かばない。
エプロンを投げ捨て、スマホをひっつかんで、潤にコールする。
「かず、悪いけど、ずっと話しかけてやって」
「うん」
かずは、ぺたりとソファーに座り込み、目を閉じた。
その横で、相葉くんがオロオロした顔でかずの手を握り続けてる。
そんな二人を見ながら、スマホに耳をすますが、コールしても、留守電に、切り替わってしまう。
埒が明かない。
俺は舌打ちして、今度は、智兄の携帯を鳴らした。
『はい』
「智兄?ごめん、今会社?」
『いいや……もうすぐマンション着くよ』
「お願いだ。視て。潤の場所教えて」
『…………どうした?』
「潤が、変なことに巻き込まれたかも」
『……』
「助けを求める声をかずがきいてる」
『とりあえず、すぐ帰る』
