
キラキラ
第29章 バースト7
ぐらぐらぐら……
天井がぐるぐるまわってる。
……なんだ、これ……
高速回転のメリーゴーランドにのせられた、もしくは荒れ狂う海に放り出された小舟の上。
そんな感覚のなか、必死で体勢を保とうと、テーブルに爪をたてた。
「……これ何入ってんのー?」
能天気なウツミの声がする。
ひょいと、目の前のグラスをとり匂いをかぐウツミに、さっき、いらっしゃいませ、といった男性従業員がニヤニヤして近づいてきたのが、ぼんやりとする視界にうつる。
「……ちょーっと、お冷やにウオッカを混ぜてみただけさ」
「きっつ(笑)……けど、コーコーセーにアルコールやばくね?」
「クスリよりましだろ」
ふわふわする意識に、入ってくる会話。
……なんだって……?
アルコール……?
「にしても、ここまでくるのおせーよ、ウツミ」
「いや、こいつガード固くてさ。崩すの苦労したわ」
「ま、賭けは俺の勝ちだかんな」
「……ふざけんな、二週間でおとすにゃ無理だわ、このボーヤは」
なんかこいつらよく分からん話をしてる……
気を抜いたら散らばりそうな思考を、必死でかき集めた。
「扉の鍵閉めたか?」
「おう。定休日の札出してきた」
「上出来」
…鍵………?
「にしてもさ、どうやって近づいた?」
「菊地ってやつの名前出した」
「……ああ、この子らの連れと一緒にいたやつな」
「そそ。そしたら、気をひくことができて」
……菊地さんと……関係ない人だった…?
突如、肩をつかまれ、背後の畳に突き飛ばされて仰向けに倒れた。
古臭い、い草の匂い。
ぐらぐらゆらぐ頭と、ぼんやりした瞳に、いやらしい顔をしたウツミと従業員の顔が、俺を覗きこんでるのがわかった。
「ま、いーか。久々に楽しもうぜ」
「だな」
「なんつった?こいつの名前」
「潤」
「潤かー……おっしゃ。差し当たり、脱いでもらおっかなー」
「だな」
二人の手が、俺のネクタイにかけられた。
するりとほどかれ、ひとつひとつカッターのボタンがはずされる。
引きちぎったりしない、馬鹿丁寧なその手つき。
頭の芯が冷えた。
ヤバい。ヤられる。
