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キラキラ

第29章 バースト7


雅紀の瞳が、分かりやすく変化した。
咎めるようなそれは、俺に説明を求める瞳。


「……行こうぜ、雅紀」


でも、ここで話はしたくない。

雅紀の腕をつかんで歩き出す。
何かいいたげな雅紀を目で制し、足早にその場を離れることにする。


「……お友達一緒なら、また明日来るね」


能天気なウツミの言葉に、思い切りにらみつけたら、ニヤリという笑顔が返ってきた。


「またね…松本くん」


その表情に、その言葉に、……背筋がぞくりとした。





無言で駅前近くまでぐいぐいひっぱって歩く。


「ね……どういうこと?」


たまりかねたように、つかまれた腕を振り払った雅紀が、ちょっと怒ったように吐き捨てた。

俺は、唇をかみ、雅紀に向き直った。


「あいつは……最近俺につきまとってくるやつで……」

「そんなん聞いてないよ!……翔さんとはなんでもないって?付き合ってないって?冗談でもそんなこと言ったらダメだろ?!」


俺の言葉尻を引ったくり、雅紀が怒鳴った。

珍しく雅紀が怒ってる。


俺は下を向いた。


分かってるよ……分かってるさ。

でも。

俺一人の問題じゃねーし……。
俺が認めたことによって、翔たちに何か不都合があったら困るじゃんか……。


小さく反論したが、雅紀の真っ直ぐな瞳にそれ以上何も言えず、口ごもってしまう。


「……バカじゃないの?今さら?そんなことくらいで、揺らぐような気持ちで、翔さんがお前とつき合ってると思うのか?」

「っ……だって……」

「それは、翔さんに失礼だよ……すごく失礼」


……お前を見損なうよ

淡々と告げる雅紀を、どこか他人事のように見つめてしまう。


「それだけはさ、否定しちゃダメだよ、潤。自分等を認める勇気がないなら、最初から男同士の関係なんか成り立たないし、成り立っちゃダメだ。
……少なくとも、翔さんは、絶対お前との関係を否定しない。わかるだろ?」


もう一度、悲しそうに告げて、雅紀は、くるりと踵を返し、駅の方に向かって歩き出した。


俺は、それを追いかけることができなかった。


ド正論を言われて、何も言い返せなかった。

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