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キラキラ

第29章 バースト7


夜も更けた頃、ピンポンとLINEが鳴った。
ベッドに寝転んでいた俺は、手元にほおりだしていたスマホを手探りで引き寄せ、画面を確認する。


《頭が痛いのか?》


心配な顔のスタンプとともに送られてきたのは、バイト終わりの翔からだ。


……かずから聞いたんだ。


ドキドキしながら、画面に指を滑らした。


『うん、でも大丈夫。バイトお疲れ様』

《無理すんなよ》

『ありがとう』


送信してため息をはく。
翔に優しくされればされるほど、自分がウツミに言ってしまった嘘の罪悪感に押し潰されそうだった。


「……っ」


突然スマホが鳴る。


……翔からだ。


俺は、パンと片手で頬をうち、普通の声を出すように努力して、もしもし……と、電話にでた。


『俺』

「うん……お疲れ様」

『やっぱり声が聞きたくなって電話しちまった。起きてたか?』

「うん…起きてた」

『大丈夫なのか。熱は?』

「ないよ……へーき。暴走したのが残ってたみたい」

『…………』

「……翔?」

『どうした?』

「……え?」

『なんか……変だぞ』


鋭い……。


「なにもないよ。大丈夫」


泣きそうになる気持ちをグッと押さえた。


ねえ、翔。
俺とのことって、周りに内緒?
知られたら嫌?
知られたら……嫌いになる?


聞きたいけど聞けないことは、胸に溢れかえってる。
翔の声音が心配そうに低くなった。



『……泣いてんのか?』

「なんでだよ。泣く理由ないよ」


慌てて明るい声をあげて否定した。


『……そうか。ならいいんだけど』


あまり信じてないような返事に冷や汗が出る。
鋭い恋人には、なんでもお見通しってわけだ。

俺は軽く首をふり、頭からいらない考えを追い出して、翔の心地いい声音のみに意識を集中した。

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