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キラキラ

第27章 かげろう ~バースト6~


Masaki



夕方、全日練習の部活から帰ってきた俺は、疲れはてて自室のベッドに転がってうとうとしていた。

日曜日の夕方は、次の日が学校ということもあるから、そこから出かける気にもなれず、もちろん課題なんかをする気にもなれず。

現実逃避とばかりに、微睡んでいたら、机に置きっぱなしのスマホから、聞きなれたメロディーが流れはじめて飛び起きた。

この着信音は、たった一人しかいない。

俺は、スマホにとびついた。



「も…もしもしっ」

「…寝てた?」

「いや…大丈夫!」


笑いを含んだ声に、返事にならない返事を返した。
受話器の向こうにいるかずの気配をさぐりながら、俺はスマホをもちなおして、ベッドに腰かけた。
かずの声を聞くだけてテンションがあがる。



「今いい?」

「うん。どうしたの?」

「…声が聞きたくなって」


でも、かずのいつもより小さな声に、とたんに心配になった。

俺は、前のめりになって、少しの声音の変化も聞き逃さないとばかりに、かずの声に集中する。


「かず…?」


沈黙を続けるかずに、焦れて、呼び掛ければ。


「うん?」


いつもと違う反応にいてもたってもいられなくなった。


「今どこにいる?俺、そっち行くわ」

「…え、いーよ」

「いいから。教えて」


渋るかずから無理矢理場所を聞き出したら、俺の住む街の最寄り駅の駅前広場にいるという。

そっちから俺に会いにきてるじゃん、と心でつっこんで、俺は、そこからうごくなよ、と念をおし、クローゼットからパンツとTシャツを引っ張り出した。

バタバタとポケットにスマホやら財布やらをつっこみ、数分後には家を飛び出した。


夕飯はー?という、母さんの叫び声に、ごめん、いらなーい!と、怒鳴り返して、俺は、夕焼けに染まる街を駅に向かって猛ダッシュした。






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