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キラキラ

第27章 かげろう ~バースト6~


kazu



二年ぶりの我が家。

門の前で、その佇まいを見上げた。

俺が生まれたときに、両親が清水の舞台から飛び降りる気持ちで買ったという一軒家だという。

小さな建て売りだが、ガーデニングが趣味の母さんはいつも家の周りに花を植え、玄関回りも小綺麗にしていた。

そこまで裕福な家ではない、ごく普通のサラリーマンの家庭であったが、常に温かな食事と笑顔が絶えなかった。

いま、目の前にある家は、あの頃と少しもかわっていない。

門の前には、俺が好きだといっていた、ピンク色の小さな花が咲き乱れていて。

まるで俺に、「おかえり」と言っているようだった。


俺は何度も深呼吸をした。

心臓がばくばく鳴りすぎて、息苦しい。

二年もの間、一度も連絡をとらなかった親。
俺をいらない、と言ったあの人。

俺は……普通に会えるかな。



どれくらいそこに突っ立っていただろう。


どうしても、インターホンを鳴らす勇気が出なくて。

やはり帰ろうか、と踵を返しかけたら、玄関の扉がカチャリと音をたてた。


「……っ」


びくりと体がすくんだ。


「……かず?」


懐かしい声が俺の名を呼ぶ。
恐る恐るゆっくりふりかえれば。

記憶の中より、少しだけ痩せた母が、涙目でこちらをみつめていた。


「……おかえりなさい、かず」


ただいま、なんていうものか、と思っていたけれど。


「…ただいま」


自然と口をついてその言葉が出ていた。

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