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キラキラ

第27章 かげろう ~バースト6~


Sho


なんともいえない顔をしてリビングに戻ってきた智兄に、

「…どうだった?」

と、そっと尋ねながら、カウンターからビールの入ったグラスを渡す。

智兄は、うーん…と変な声をあげながら、グラスの中身を一気に飲み干し、どうだろうな…、と呟いた。


「…とりあえず、母親に会いに行く日を決めたら教えろって言ったら、あいつ、泣きそうな顔はしてた」

「そっか… 」


ため息をつく智兄に、お疲れ様と、声をかける。

かずの笑顔が好きな俺たちは、その顔を曇らせることにはできるだけ関わりたくないのが本音。
でも、こればかりは避けて通れないから…。

俺も、そっとため息をついた。

かずが、そもそも家出した理由は、母親の本音を読んでしまったことに端を発する。

知らなくても良かった親の心の闇を知ってしまったかずは、不信感に耐えきれなくなり、家を出た。(第12章ほたる参照)

あれから、二年たつ。

今は、かずの気持ちも少しは落ち着いてはいるだろう、と期待しているのだが…。


「でもなぁ…ここはどうしても越えてもらわないと、かずの将来にかかわるからな」

「だよね…」


学校に行くならば、大野家においてやるっていうのが条件だったから、かずはここからきちんと登校し続けた。

家出したかずだけど、実は、裏で、智兄はかずの母親と何回か連絡をとりあっている。

だからこそ高校の学費はかずの親がきちんと払い続けた。
おかげで、出会ったころは高一だったかずも、今は高校三年生。

三年生という学年は…進学するにしろ、就職するにしろ。
人生の大事なターニングポイントにさしかかっていることに間違いない。

その大事な時期を、保護者でもない俺たちがつぶすわけにはいかない、と、俺と智兄は大分前から話し合っていた。


働くのか進学するのかを含め、自分の今からの人生の舵をどうきっていくのか、相談にはいくらでものれる。

でも、俺も智兄も、かずにとっては、所詮、他人だから。

死別しているわけではなく、かずのご両親は健在で、少なくともご両親側に、かずを受け入れる気持ちがある以上。
この先のかずの未来の選択は、いったん家で検討した方がいい、というのが俺たちの結論だった。

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