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キラキラ

第27章 かげろう ~バースト6~


「ふふっ…くく」

だけども、笑いながらも、かずは手は離さない。

「……」


嫌ならば、手を振りほどくよね?


その事実が、俺の何かに火をつけた。


大事に大事にしてきたけど。
やっぱり決めた!
今日は、少し関係を深くしたい!

俺は、もう半ばやけくそで、道の脇の暗がりにかずを引っ張りこんだ。

昼間ならば丸見えであろうが、夜なら、灯りさえ届かなければ、死角だらけ。

建物を背に、かずを押し込み、覆い被さるように
その前に立つ。

あこがれの壁ドン…しちゃった!

かずは、小さく身を縮ませ、俺を見上げている。
もしもその瞳に、怯えの色があったら、冗談だよって笑えるうちにやめようと頭の隅で思った。

だけど、かずは、瞳を潤ませて、期待するような色で俺を見つめていた。

ブカブカの俺のカーディガンを着て、指しかでてない手で、俺のシャツのすそをぎゅっとつかんで。


「あいばくん…?」


小さく名を呼ばれ。


「……」


俺は返事のかわりにその瞳に引き寄せられるように、顔を傾けた。


かずの顎が…応えるようにくっと上がって。


……唇と唇が、柔らかに重なる。


「……」

「……」


俺は少し唇を離して、「…好きだよ、かず」と、低くささやいた。

かずは、キラキラ光る潤む瞳を細めて、「うん…」といった。
そして、「俺も」と、小さく言った。


俺がもう一回顔を近づけると、かずがゆるりと瞳を閉じた。

今度はさっきより、もう少し長くキスをした。


「……ん…」


かずがちいさく吐息を漏らした。

柔らかくて温かくて。
……すごく気持ちいい。

俺は唇を離すと、そっとかずを抱き寄せた。


つきあって初めてだった。
キスするのも。
抱き締めるのも。


かずの体は細くて華奢で、力をこめたら折れそうだった。
だから俺は殊更に優しく優しくかずを抱き締めた。

かずが俺の腰に手をまわして、きゅっとしがみついてくる。

鼻先をふわふわとかずの髪の毛がくすぐる。
俺はかずの髪にもキスをして、胸いっぱいにかずの香りを吸い込んだ。

愛しくて愛しくて。

幸せすぎて泣きそうだった。

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