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キラキラ

第27章 かげろう ~バースト6~


『…とりあえず、今、翔さんがめちゃめちゃ怒って、そっち向かってるから』

『…うわぁ…こわ』


潤くんが情けない声を出すもんだから、クスクス笑ってたら、傍らの中島さんが怪訝な顔をしたのに気づいた。


あ、やば。


慌ててゆるんでる顔をもとに戻す。


何も知らない人には、勝手にケラケラ笑ってる俺なんか、危ない人にうつるだろう。
反対側の相葉くんを、こっそり見上げたら、しょーがないな、という顔で、笑ってた。

相葉くんには分かってるのだろう。
俺がテレパスを使っていることを。


…気をつけなくちゃ。


その間にも、翔さんは、案内板を見ながら、ずんずん進んでゆく。
ステージの設置された広場に向かっているようだ。



やがて、マイクを通し、賑やかな司会の声と歓声が聞こえてきた。

「…ちっ…」

小さく舌打ちして、翔さんがついに走り出した。
俺たちも、後を追う。

目の前に現れたステージに、ざっと目を走らせた。
でも、立っているのは女の子ばかり。

あれ、と思いながら、翔さんに続いて、ステージ裏の、待機場所のようなところに飛び込んだ。

「潤!」

ガヤガヤと集まってる人混みの中。
翔さんは瞬く間に、心細そうに、所在なげに突っ立ってる潤くんを見つけ出した。

「翔…」

俺たちを見て、ホッとした顔をして安堵のため息をつく潤くんは、③と書かれた番号札を胸につけてる。


「…おまえ、なにこんなの、つけちゃってんの?」


翔さんが、潤くんの名札をぴんと弾いて、苦笑いする。


「分かんないけど…そのへんにいる法被着た人みんなに頭下げられんだもん…」


自分より年上の人たちに頼み込まれて、断るに断れなくなった、と潤くんはいう。

「ちょっと、ステージに並んでもらうだけだからって 」

「待てよ。なんの企画だよ」

翔さんが、機嫌の悪い声で問うと、潤くんは、天然な笑顔で、

「笑っちゃうよ。キャンパスで見つけた王子様だってさ」

そんなの、柄じゃないよねー?、とコロコロ笑う潤くんと、顔色をなくす翔さんが、対称的。

俺は、不謹慎だけど思わず笑っちゃった。


見てよ、潤くん。
翔さん、呆れてんじゃん…。
…無自覚にも程があるってば。


「帰るぞ」


短く言い、翔さんは、潤くんの名札をむしりとり、潤くんの手をとった。

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