
キラキラ
第27章 かげろう ~バースト6~
その時、翔さんのスマホが軽快なメロディーを奏でた。
ディスプレイに目を走らせ、少し微笑んだ翔さんは、もしもし、と電話にでた。
潤くんかな…、とぼんやりそれを見てたら、翔さんが、みるみる顔をしかめ、
「はぁ?!」
と、言った。
その不機嫌極まりない顔と声に驚いて、何事か、と、相葉くんと中島さんと、三人で顔を見合わせた。
翔さんは、どうみても怒りながら、電話口に噛みついてる。
「んなもん、ダメに決まってんだろ?さっさと帰ってこい!……え?…は?あんた誰?…いやいや、そいつダメですから…って、ちょっと! 」
くっそ!切りやがった!と、翔さんは舌打ちして、スマホを乱暴にポケットにねじ込んだ。
そのまま、慌ただしく歩き始めたから、慌ててその腕をつかんだ。
「翔さん?なに?どしたの?」
「…潤が。変な企画につかまって身動きとれなくなってるって」
「企画?」
翔さんは、苛立ちをおさえるように、髪の毛をくしゃりとかきあげた。
「よく、分かんねぇけど。ステージに上がらされそうって」
「ええっ?!」
潤くんが?!
「んなことしたら、変に目立つじゃねぇかよ…」
ぶつぶつ言って、翔さんは、足早に歩き始めた。
俺たちも顔を見合わせて、慌ててそのあとを追う。
たくさんの人の前で跳んでしまうことを懸念しているのか。
それとも単純に、潤くんに悪い虫がつくことを警戒しているのか。
きっと、そのどちらもなんだろうな。
まるで、潤くんがどこにいるのか分かっているかのように、ずんずん歩いてゆく翔さんの背中は苛立ちに満ちてる。
俺は、歩きながら、意識を遠くに持っていった。
『潤くん…潤くん。聞こえる?』
『………かず?』
チカラで呼びかけたら、しばらくして潤くんの応答があった。
ホッとしてそのまま問いかける。
『うん。どうしたの?』
『なんか、よく分かんなくて…子供つれてったら、ちょっと待っててって言われてさ。気がついたら派手な法被着た人たちに囲まれてて…』
『大学の人?』
『うん。そんで、是非このあとのイベント出てくれっつって。離してくんねーの』
『逃げれないの?』
『え。跳んでいいの?』
『バカ。それはダメ』
慌てて制すると、潤くんは、
『……なんか無理っぽいもん』
と、ぼやいた。
