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キラキラ

第27章 かげろう ~バースト6~


「風磨のやつ、ステージに出演すんだってよ」

電話を切った翔さんが、面白そうに顔をあげた。

瞬間、ばちっと俺と目が合い、翔さんはピクリと眉をあげた。

俺の小さな変化を読み取ってくれたみたいだ。

翔さんは、おもむろに、中島さんの口に、食え食えとたこ焼きをおしこんでふざけ始め、俺が集中できるように仕向けてくれる。

何食わぬ顔をしながら、引きずられそうになる意識を、なんとか踏みとどまらせるのは至難の技。


中島さんの心に触れてしまったら終わりだ。


内心、焦りながら、エンジンのかかり始めたチカラを封印しにかかる。

そんな俺を、リアルに繋ぎ止めてくれる相葉くんの存在は大きかった。
初めて握った相葉くんの手は、予想以上に大きくて温かくて。
ぎゅうっと握ったら、大丈夫だよ、というように軽く握り返されて、……おちついてゆく。

中島さんも、風磨さんが、ステージ出演する、と聞き、意識が切り替わったようで、こんこんと俺に流れ込んでた辛い気持ちも、蛇口を絞るように徐々に小さくなった。


『…大丈夫?』

頭に響く言葉。
相葉くんが話しかけてきてくれる。

『うん…ありがと』

俺は返事をし、人目もあるから、と、名残惜しいけど、相葉くんの手をそっと離した。

じんわりと残る温かさは、本当に彼そのものだな、と思った。

もっと繋いでいたい、と思った。




風磨さんの出演するステージは、昼からの部。

有志によるバンド演奏だという。

翔さんが電話で聞いた情報だと、サークルの先輩に、無理矢理押しつけられ、渋々出演させられるとのこと。

「……そーいや、高校んときも、あいつ楽器できるとか言ってたなぁ」

翔さんが、ぼんやり呟いた。

「ギターができるはず」

中島さんが懐かしそうな顔で頷いた。

「高校の文化祭でも、無理矢理頭数入れられてたじゃん。本人嫌そうにしてたけど」

「あーそういや、そうだったな」

翔さんが、面白そうにうんうん、と頷いた。

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