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キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~


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「大野、またサボリ?」


ぺっちゃんこの鞄を抱えて、昇降口に向かい、ゆるく歩いている金髪に、後ろから声をかけた。

どこからどうみても、今から帰ります、サボります、的な風体。

あいかわらす、堂々としてるよね。

その大野は一瞬だけ足をとめ、ちらりと俺を見たあと、めんどくさそうな顔になり、無言で再びペタペタ歩き出した。


「出席日数大丈夫なの?ダブるよ?」


追い討ちをかけるように、もう一度声を投げる……が。


無視。


そのまま歩き続ける大野に、あきらめて傍らの潤を見れば、潤も苦笑いだ。
見かねた潤は、少し声を張り上げた。


「おい。香取が言ってたぞ。今日のテストさぼったやつは、呼び出しだとよ」


無視。



「それも校長室に」


大野がピタリと止まった。

そのまま嫌な顔でこちらを振り返った。


「……それは、マジか」

「おお。マジマジ」


大野は、すごくすごくめんどくさそうな顔になった。
そして、しばらくじっと足元をみて、何かを迷うような顔になった。

その後、なんとこちらにペタペタ引き返してきた。


俺は、思わず潤の顔を見た。
潤も、してやった!と、言う顔をした。

大野は黙ったまま、ペタペタ気だるく歩いて、俺らの横をすりぬけ、そのまま教室に戻って行った。
スッゴい!
あの大野があきらめた!

「潤、よく知ってたね。香取と喋ったの?」

「ああ……ありゃ、嘘だ。そんなことくらいで校長室なんかに呼ばれるわけねーだろ」

「ええっ!」

「……嘘も方便だ」


にっと悪い顔をして笑う潤。


……まあ、いっか。
バレたら怒られそうだけど。


喧嘩っ早くて、みんなが怖がる大野は、本当はきっとすごくいいやつなんだ。
その証拠に、弱いものいじめは絶対しない。

そんな大野とは、ずっと同級生でいたいと思った。

それは潤も同じで、俺たちだけは、あいつを気にかけてやりたいな、と意見が一致し、事あるごとに声をかけてる。

いつもそんなに響かないけど、時々こうやって反応してくれると、なんだかうれしい。


「あれ。おーちゃんは?さっき帰っていこうとしたのが見えたけど」

相葉くんが、やってきたから、俺たちは教室を指差してにんまり笑った。

おーちゃんは、いいやつだよ、という彼の同室の相葉くんと、その友人のにのも、大野に好意的。

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