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キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~


「……あ?」


ぼんやりと、何故櫻井がここに?というような不審げな目をする大野に、俺は、ちょっと真面目な顔をして、頭を下げた。


「あの……さっきいい忘れたから。ありがとう」

「……何」

「いろいろと……ごめんね」

「…………」

「気にしないで。俺が言いたかっただけだから」



顔をしかめて目を擦る大野に、俺は、にこりと笑い立ち上がる。
訳がわからないという、ハテナの顔をしてる相葉くんに、「ごめん、お邪魔しました」と、告げ、俺は、さっさと部屋に戻った。

我ながらさっきの相葉くんのようだ。
さながら台風みたいだ。



「……言えたか」

「うん」

「そうか。良かったな」


ベッドに座った姿勢で、柔らかい笑みを浮かべて出迎えてくれた潤。


唐突に、さっき、俺を好きだ、と抱きしめてくれた彼の腕がとてつもなく温かだったことを思いだした。


その胸に飛び込みたいな、と思ってしまい、ドキドキしてきた胸をぐっとつかむ。


俺とおまえの想い……さっき重なったよね。
もう隠す必要がない…よね。

なら。

これくらいしてもいいかな?




「……潤」

「ん?」

「いいこと考えた。目つぶって、10数えて?」

「なに?」

「いいから」

「………?…うん」



潤の大きな目が、戸惑いがちに伏せられた。
俺は、足音を忍ばせて潤に近づいて。

そっと彼の隣に座った。
俺の気配を感じたのか、潤が、ピクリと動いた。

抱きつくだけのつもりだったけど、衝動的にキスがしたいと思った。

さっき、潤には言えなかったけど。
実は、俺のファーストキスは、あの先輩にとられちゃったんだよね。

……だから。
その記憶、早く消して?

俺は、潤の肩に手をおき、下から掬うように彼の唇をふさいだ。
 

「……っ」


潤が、びっくりしたように目を開けた。
俺は、潤の柔らかな唇から、ゆっくり離れ、微笑んだ。


「……へへ」


いたずらっぽく笑って見せたら。

潤は、恥ずかしそうな表情になりながら、手を伸ばして、俺の体を力強くぎゅうっと抱き締めた。
ふわりと再び彼の香りに包まれて、俺も潤の背中に手をまわした。

心臓の音が……うるさかった。
幸せだった。

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