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キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~


……なんだか、俺の周りは、喧嘩っ早いやつばかりな気がする。


俺は、口を尖らして不満そうな顔をしている潤を見て、くすっと笑った。
俺のこと考えてくれてるんだよね。
ありがとう。


「……そのせいで、今度は潤が謹慎になんてなったらやだよ」

「……別にかまわねぇ」

「……ダメだよ。そんなことしたら、怒るからね」



自分のことをもっと考えてほしい。
大野も。潤も。

謹慎処分なんて、他の学生や先生たちにも、心証が悪いじゃないか。
学園入ったばかりなのに。

俺はさっきの大野とのやりとりを思い出した。




『何考えてんの?』


『うるせぇな。俺が気に入らねぇからぶっ飛ばした。そんだけだ』


『そんな……相手は議員の息子だっていってるよ?』


『関係ねぇだろ、別に』


『もっと自分大切にしてよ……!』


『ゴチャゴチャうるせぇな。黙って食えや……つかどっか行け』




謹慎中は一度も会えることはなく。
やっと顔を見れた大野に、詰め寄ったら、しっしっと追い払われて。
それから何を言っても響かない大野に、あきらめて部屋に戻ってきたものの。


……そういえば。


「……そうか。俺……大野にお礼を言ってない」

「いいんじゃねぇ?」


ぽつんと言った俺に、潤は肩をすくめた。


「それこそ別にあいつは、お前に礼を言ってもらうためにしたことじゃないだろ」

「でも……俺、ちょっと隣に行ってくる」

「大野のことだからもう寝てるだろ?……あ、おい」



潤の声を振り切って、部屋を飛び出し、隣の部屋の相葉くんと大野の部屋をノックした。
はーい、と言う朗らかな声とともに、中から相葉くんが出てきた。


「あれ?どしたの?」

「大野は?」

「寝てるよ?」

「……ごめん。ちょっと入るね」



俺は、キョトンとしてる相葉くんの腕をかいくぐり、足早に大野のもとに歩み寄った。
スラリとした細身の体を少し曲げて、大野は横向きに壁を向いて寝息をたてている。


「ねえ、大野。ごめん、起きて」


ポンポンと肩に触れる。
ピクリと動いた体が、ゆるゆるとこちらを見上げた。
眠たそうなそのぼんやりした瞳は、いつものギラギラした色はなく、拍子抜けするほど可愛らしいもので、俺は、笑ってしまった。
その気の抜いた顔は一瞬だけで、すぐにめんどくさそうに歪められたけれど。

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