
キラキラ
第26章 10カゾエテ ~Count 10~
そういって、俺から少しだけ体を離し、潤んだ瞳で微笑む翔は、そんじょそこらの人間じゃ太刀打ちできないくらい、ぶっちぎりに綺麗だった。
「……」
心臓が暴れまわってる。
あきらめてた思いが叶うなんて。
こいつと、両思い……。
嬉しすぎて死にそうだ。
高鳴る胸をおさえて、俺は、翔の後頭部をささえ、そっと顔を近づけた。
翔が、応えるようにゆっくり目を閉じたのを確認して、俺も目を閉じる。
あと数ミリで唇が重なる……まさに、その時だった。
「おーい!翔ちゃーん!!今日のノート貸してー!」
静寂を打ち破るように、ガンガンガンと、扉をたたくのは。
「……!」
慌てて離れたと同時に、
「入るよー!」
と、元気な相葉の声とともにガチャリとドアがあいた。
翔は、素早い身のこなしで机に近づき、素知らぬ顔で、本棚に指をのせてる。
しかも、普通に、
「何のノート?」
なんて言っちゃってる。
「生物生物!」
と言って、賑やかに入ってくる相葉の顔をみることができず、俺はわけもなくその場でストレッチを始めた。
……俺、めちゃ挙動不審。
つか、てめぇー相葉ー!!!
俺は、やり場のない苛立ちをおぼえながら、バクバクいってる胸をおさえて、前屈した。
いかん……これは心臓に悪い。
放心状態の俺に、相葉は面白そうに声をかけてくる。
「潤、どしたー?課題やるっていってたじゃん。なにサボってんの?」
「うるせぇ。てめぇに言われたくねぇわ!」
「はいはい、ほら。生物だろ」
「そうそう!ありがとー!明日、香取のやつ、小テストするっつってたから、助かる」
翔からノートをうけとり、明日の朝返すね!と、これまた賑やかに相葉は出ていった。
