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キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~


ぴくりと動いた背中を宥めるように、ゆっくり擦る。
翔の体は思った以上に華奢だった。
微かに震えている体を、優しく抱き締めた。


「俺が好きなんだろ……なら、触れても嫌がるなよ……」


囁くと、翔は鼻を鳴らしながら何度も頷いた。
そうして、俺の胸に頬をすりよせてくる。


「……言い訳だよ。お前に触れられたら、想いを暴露しそうで怖かっただけ」

「……なんだ」



………不安になっていて損した。


俺は、自分も泣いてしまいそうになり、それをぐっと耐える。

失恋したと思っていた。

まさか、こんな逆転サヨナラのような展開になるなんて、誰が思っただろうか。

この腕の中にいる人に、その思いは、一方通行ではない、と伝えてあげないと。


俺は、ふっと深呼吸して、腹に力をこめた。
そうして、そっと名を呼んだ。


「翔…」

「………うん」

「一回しか言わねぇからな」

「……?…う……ん」

「……俺も……お前が好き」

「………」

「両思いだ、俺たち」


翔が、ゆっくり顔をあげた。

その涙にぬれた瞳は信じられない、というように大きく見開かれている。


「……良かったな。お互い」


にっと笑ってみせたら、翔もその瞳を細め、ふわりと笑った。
遠慮がちにシャツをつかんでいた翔の手が、俺の背中にそっとまわった。

夢のような状況。
舞い上がりそうな気持ちをセーブしながら、俺は殊更に翔の体を強く抱き締めた。
翔もこたえるように強くしがみついてくる。

俺たちは、まるで磁石でくっついてしまったかのように、しばらく動かずに、ずっと抱き合っていた。

やがて、俺は、翔の体温と香りを感じながら、耳元にゆっくり唇を寄せる。

ならば、あの役目は俺がする。
……いいだろう?



「………キス……しようか…?」


翔は、くすっと笑ったようだった。
そして、甘えた風に頷いた。


「……うん、して…」



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