
キラキラ
第26章 10カゾエテ ~Count 10~
大野は恋人じゃない……?
ゆっくり振り返ると、翔が、真っ直ぐに俺を見つめている。
その瞳は、キッパリとした口調と、意思を持った色とはうらはらに、潤んだまま。
瞬きをしたら、落ちてくるんじゃないかいうくらいに盛り上がってる涙に、ドキリとした。
そんな顔を見ていたら。
大野とはつきあってない……のは、本当かもしれない、と、思った。
少しだけ、心が軽くなる。
だけど、すぐに思い直す。
……いや、だけどキスしろって、おまえ……
「……そういうのは、大野……じゃないなら、お前が本当に好きなやつにしてもらえ」
恋人が大野じゃないならないで、頼む相手も選べ、と言うのだ。
俺に頼んでどうすんだよ?
近くにいるやつを選んだ、というだけならば、お手軽すぎんだろ?
努めて柔らかく諭してやると、翔は、ゆっくり首をふった。
その拍子に、限界までその大きな目元を覆っていた涙の膜が破れて。
翔の頬をすーっと一筋涙が流れた。
綺麗な……綺麗な涙だと思った。
思わず見惚れていたら、翔の震える唇が、掠れた声を紡いだ。
「……俺……俺が好きなのは……お前だよ」
…………え?
「…ああ……言っちやった……」
翔は、泣きながら微笑んだ。
バタパタっと涙を続けざまに落とした。
「……潤のせいだよ…あんまりおかしなこと言うから…」
「………俺……?」
俺は、呆然としながら、キラキラする涙を指先で拭う翔を見つめた。
あまりに、予想してない展開についていけない。
「……ごめん……好きになってくんなくてもいいから。お…願いだから…俺を嫌わないで」
今までみたいに……一緒にいて。
うつむいて、か細く告白する翔の肩は震えていて。
何かを考える前に、体が動き、その細い体を抱き寄せていた。
