テキストサイズ

キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~


だいたい、あの二人に共通項なんてあんのかよ?
二人きりでいるところなんて、みたことない。


翔も翔だ。
あんな、つんつんしてる男より、俺の方がよっぽど……。


と、そこまで考えて、そんな自分が嫌になった。
苦笑いして、胸をぐっとつかむ。


俺の方が……なんだってんだ。


大野は、喧嘩は強い、勉強はできる(らしい)、同じ中等部からの持ちあがり組だから、大野は俺の知らない翔を知ってる。


……ほらな、俺よりたくさん優れてるとこあんじゃん……。


……ああ、だめだ


考えれば考えるほどドツボにはまりそうだった。
他人を貶めても、自分が惨めになっていくだけだ。

……苦しくなり、壁に向かって横たわり、目を閉じた。



その時、カチャリと遠慮がちに、扉が開く音がした。
……背中越しに翔が帰ってきた気配をかんじる。
そっとかけられる言葉に、俺はぎゅっと目をつぶった。


「ただいま………潤? 寝てんの?」

「……」


……俺は、多分、今、ひどく醜い顔をしているはずだ。
あいつと普通にしゃべるには、少しだけ時間がほしい。
そう思った俺は、狸寝入りを決め込んだ。


「食べてすぐ寝たら太るよって言ってんのになー」


笑いを押し殺しながら、小さく呟いてる声は、さっきの険しい顔と、全くつりあわなくて。


……仲直りしてきたんだろうか。


またモヤモヤしてくる俺は俺で、我ながらめんどくさい。

じっと黙って寝てるふりを続けていたら、翔は、何を思ったのか、自分の机に向かわず、俺の傍に歩いてきて、そのまま座りこんだようだ。


……?!


……背中に感じる翔の視線。


なんだよ……?なんだってんだよ?


心臓がバクバク音をたてる。
息がしづらい。

すると、…、俺の髪にそっと翔の指が触れた。

ビクリと動きそうな体を全力で制御した。


「潤……」


なんだよ。
やめてくれ。
触るな。
おまえには大野がいんだろ。


「どうしよう……俺」


……?

泣きそうな声音に、思わず振り返りそうになった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ