
キラキラ
第26章 10カゾエテ ~Count 10~
「ええええっ!!」
「バカっ!声がでかい!」
思わず、相葉の頭を思いっきりはたいてしまった。
咄嗟に翔の方をみたら、こっちに気がついていないようで、大野と話し込んでいる。
というか、翔が一方的にまくしたてて、大野がめんどくさそうな顔でそれを聞いてる図式だ
「え……だって!大野と翔ちゃんが?!嘘でしょ?」
「そう思いたいがな……」
「嘘じゃん絶対。二人のあの顔見てよ。あれ恋人同士の顔?」
顔をしかめた二宮が、くいっと顎で二人を指す。
相変わらず迷惑そうな顔をしている大野。
翔は、……どうやら怒ってるみたいだ。
こっちからは横顔しかみえないけど、不穏な空気が、みてとれる。
「……ただの痴話喧嘩じゃねぇの?」
「あんな真剣な顔で?」
「……」
あの顔をどうとるか……なんて。
正直どうでもいい。
どちらにしても、翔と大野が二人でいるところなんて、俺はこれ以上見たくなくって。
猫舌なのを我慢して、自分のグラタンを急ピッチで食った。
汗がふきだしてきたけど、一生懸命早く食った。
「……ごっそさん。俺、課題まだだから部屋戻るわ」
相葉たちに手をひらりと振り、そそくさと食堂をあとにした。
舌を火傷したのか、ヒリヒリした。
背中も汗だくだ。
だけど、とにかく…とにかく。この場にいたくなかった。
逃げるように入った自分の部屋。
ベッドにダイブして、ぐるぐるする頭を落ち着かせる。
ちらりと主のいない向かいのベッドに目をやる。
翔の笑顔が浮かび、また苦しくなった。
俺は、多分自分で思ってる以上に、翔のことが好きになってたみたいだ。
大野と翔、二人が並ぶ姿をみるだけで、胸がつまりそうになる。
もっと早くこの思いに気づいていたならば……
……気づいていたら?
「……」
その発想に息をのんだ。
俺はどうしただろう。
翔が仮に大野とつきあっていなければ。
告白していただろうか。
……男同士でも、俺はその一歩を踏み出していただろうか。
「……」
ベッドの上で転がり、深い息をつく。
すべてはタラレバの世界。
もしも、だなんて思ったって……何もかもが遅すぎた。
