
キラキラ
第26章 10カゾエテ ~Count 10~
「あいつ謹慎とけたの?」
二宮がグラタンをフォークでざくざく刺しながら、顎で大野を指した。
相葉は、ハテナと首をかしげ、
「多分ね」
と、軽く頷いた。
「なんだよ、多分って」
「だって、そんな、いつまで?なんて聞いてないもん」
二人のやり取りを聞きながら、俺の経験上、まあ病院絡むような喧嘩程度なら、謹慎は一週間から、10日くらいだろう、と予測する。
ちょうど、今日でとけたくらいだろうなぁ。
俺は、ちょっと冷めたアスパラをモグモグ口にした。
茂子さんのグラタンは絶品。
茂子さん自身も、一番美味しい状態で食べてもらいたいこだわりがあるから、よく、
「夕飯は早めに食べにおいでや」
と、みんなに言ってる。
きっと、その連絡が、個人的に大野にもまわったのだろう。
大野が唯一言うことを聞くのは、学園の教師ではなく、おそらく茂子さんだけだ。
ふと、厨房にいる茂子さんが、大野の頭をヨシヨシとするのが、見えて、目を疑った。
振り払うこともなく、大野は肩なんかすくめちゃってる。
きっと、あんなことができるのも茂子さんだけ。
大野は、少しだけ笑ってた。
……笑った顔は、意外に幼いんだな。
そんなことを思いながら、ふと、翔をみたら、翔は真剣な眼差しで、大野を見つめてた。
そんな彼を見て、再びへこむ俺は、我ながらバカだなぁ、と思う……。
大野はそのまま端っこに座って、悠然と夕飯を食べ始めた。
周りから遠巻きに見られているのも意に介さず。
そして。
「ごめん、潤。ちょっと大野に話があるから先戻ってて?」
翔が突然トレーを持って立ち上がった。
は?
……ここにも周りを気にしない男がいた。
呆気にとられて、翔を見上げてると、翔は、そのままトレーを抱えて、大野の席目指して歩いていってしまう。
二宮と相葉も、ぽかんと成り行きを見つめてる。
翔は、大野の席の向かいに座った。
噂を知ってる連中は、みんな好奇の目で二人を見てる。
きっと気がついてないのは、本人たちだけなのだろう。
「どしたの……?櫻井」
二宮がぽつりと言う。
……おっと、ここにも事情を知らないやつらがいた。
「……なんかさ……」
俺は、自分の失恋の話はふせ、噂話のみを話して聞かせた。
