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キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~


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恋愛なんてもうごめんだ、と思ってた。
好きとか、嫌いとか、駆け引きもすべてめんどくさい、と思ってた。
当分、女はいらない、と思ってた。

人を好きになることは、しばらくない、と思ってた。


そうさ。
それに翔は女じゃない。


……でも。



「潤?」


「……っ」



近ぇよ!


目の前に表れた翔の顔に、息をのんだ。
思わず後ずさった俺に、翔はクスクス笑った。


「チーズが冷めたら、茂子さんのグラタン美味しさ半減しちゃうよ?」


「……俺は猫舌なんだよ」


ぼそりと返すと、そうだっけ?と、翔はフォークでマカロニを持ち上げ、ふーふーと息を吹きかけた。


「うっわ、うまー!これアスパラ入ってる」

「相葉くん、この貝とって」

「……これも食べらんないの?」

「無理」

「はいはい」


相葉と二宮の夫婦のようなやりとりも日常化してきてて。

いつしかこの四人でいることが当たり前のようになっていた。


俺は、マカロニを一本だけ口にいれた。


翔と大野がつきあってるかもしれない、ということを知ってから一週間たつ。

その間、翔が大野と二人で会ってるみたいな様子はなかった。
相葉の話だと、謹慎中の大野は、部屋でずーっと寝ているらしい。
俺らが学園に行ってる間は、長瀬さんのところで、勉強しているという話だ。

飯も風呂も、時間外に一人でさっさとすませているようで、おそらく同室の相葉以外、大野とは誰も会ってないんじゃないだろうか、と思う。


「うまいね、これ」


翔が柔らかく微笑む。
俺は、笑い返して頷いた。


彼の笑顔をみるたびに、胸がきゅんとしていたが、いまは、ちょっぴり痛みを伴う。


初めて失恋のほろ苦さを知り、いまだにその苦しさから抜け出せないでいた。

好きだ、と気づいた日が失恋した日だなんて、俺も可哀想なやつだよな。


……しかも、大野にとられるなんて。
ありえねーし……。


誰にも気づかれないようにため息をはく。

そうして、またマカロニを2本口にいれたとき、食堂の入り口が少しだけどよめいたのに気づく。

何気なく目をやり、心臓が跳ね上がった。

そこにはトレーをもって厨房に向かう大野がいた。

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