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キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~


「俺のせいだ……」


弱々しくぽつりと呟いたと思ったら、俺の背中が少し沈んだ。
翔が、俺のベッドに突っ伏したみたいだった。


大野がらみだろうか。
 

そんなこと知ったことではない、という気持ちと、どうした?と、聞いてあげたい気持ちがいりまじる。


どんよりした背中の気配。


「……」


俺は、むくりと起き上がり、そんな俺にびっくりして顔をあげた翔の手首をつかんだ。
瞬間、大袈裟なほどに体を震わせて、翔が、その手を振り払おうとした。


……っ
負けねぇぞ


やはり、俺に触れられんのは嫌なんだな、と、一瞬、傷つき、めげそうになった思いを奮い立たせて俺は翔から手を離さなかった。

翔は、小刻みに首をふり、その体を強張らせた。


「潤っ……離して」

「いやだ」

「お願いだから……」

「……そんなに俺が嫌だ?」


話を聞いてあげようと思ってたのに、口をついたのはそんな恨み言。
即座に後悔したが、翔の反応は予想に反していた。

もともと大きな目をさらに大きくして、文字通り固まっている。


「ちがっ……そういうことじゃ……」

「どう違うんだよ……?」


そっと手首をほどいた。
10日ほどまえのアザは、あらかた消えていた。
その細い手首に、指を這わす。


「……嫌いなら嫌いって…」

「違うっ……違う!」


翔が、叫ぶように否定してくることに、嬉しい気持ちと、どうせ、おまえの一番は大野だろ?というひねくれた気持ちが、ないまぜになる。

俺は、冷ややかな目で、必死に否定する翔を見つめていた。

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