
キラキラ
第26章 10カゾエテ ~Count 10~
俺の心配をよそに、翔はいつも通りだった。
よく笑い、よく食べて、俺に勉強を教えてくれて。
一緒に風呂に入り、一緒の部屋で眠る。
アザさえなければ、本当にいつも通りの翔だった。
ちなみに、俺の「きゅん」は、あいつの笑顔にときどき呼応して表れた。
……俺に無邪気に笑いかけてくれたとき、よくそうなった。
ただひとつこれまでと変化したことがある。
俺から触れると、あいつは体を強ばらせるようになった。
何気なく肩を抱いたら、びくりと体を震わせて、さりげなく俺の腕から逃げる。
最初は俺も勘違いして、「俺に緊張してんの?可愛いな」と嬉しくとっていたけれど、やがて、そうでもないことに気がついた。
だって緊張の種類が違うのだ。
ちょっと照れ臭い緊張と、嫌悪の緊張は違う。
そして、翔のはあきらかに後者だ。
………マジかよ…
それに気づいてしまった俺は、自分でも引くくらい落ち込んだ。
翔の髪に触れたり。肩に触れたり。
そんなスキンシップのひとつひとつが、俺は、意外と好きだったんだ……。
「どうしたの?ぼーっとして」
翔が不思議そうな顔をして、唐揚げをぽいと口にほおりこんだ。
「ん?なんでも」
嫌われてはないんだろうけどなあ……
そ知らぬふりをして二杯目の味噌汁をすする。
今日の茂子さんの味噌汁には、もずくが入ってる。
海鮮の苦手な二宮がおしつけてきたから、俺は、二宮のぶんも食ってる。
すると、隣で山盛りのご飯をかきこみながら、相葉がからかってきた。
「エロいことでも考えてたんじゃないのー?」
「お前と一緒にすんな」
「ひどっ」
俺らのやりとりに、翔と二宮が顔を見あわせ、肩をすくめ、クスクス笑った。
しばらくして、お茶を飲んでた二宮が、あ、そーいえば、と呟いた。
「ねぇ、大野って今日学園来てた?謹慎になったって本当?」
……え?
「……知らねぇよ。あいつ、時々学校サボったりしてるし」
「相葉くんは?なんか聞いてる?」
「んー?今朝、俺が登校するときまだ寝てたから、声はかけたけど」
「今度は何したんだ、あいつ」
「うん。なんかね、上級生と喧嘩して、病院送りにしたんだって」
「へぇ……さすが」
感心して、何気なく翔を見たら、翔は真っ白な顔をして動きをとめていた。
