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キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~


「……翔?」


そっと、問いかけると、翔は、ハッとした顔になり、眉をさげて笑った。


「や。なんかビックリして。……さすが大野だね」


きっと、考えていたことと違うことを口走っているのだろうが、その考えていたことが皆目見当がつかない。


だいたい、なんで大野なんかに、反応してんだよ?


ちょっと面白くない気持ちで、口をつぐむ。
その間にも、二宮と相葉は、大野の話題で盛り上がってる。


「え。じゃあ、大野はしばらく、学園に行かずに、ずーっと寮にいるんだ」

「そういうことになるよね?」

「相葉くんがここ来るときは?」

「寝てた」

「……謹慎の意味あんの?」

「さあな」



翔の顔をうかがう。
動揺したのは、あの一瞬だけのように見えたが、顔色が白いのは、なかなかもとに戻らなかった。

そんな彼の様子が気にはなるものの、聞いてもとぼけるのは分かっていた。

追い詰めてしまうのも嫌だから、ひとまず見守ることにする。

……だけど。
今まで以上に、あいつを一人にしないように気を付けようと思った。




それから数日後。

翔の顔色がおかしかった理由は、予想に反してわりと早く判明する。


俺がトイレの個室に入ってると、喋りながら二人ほど入ってきた気配がして。

いつもなら気にもとめないのだが、その二人の会話が突如として耳にささった。


「……知ってるか? 大野の謹慎」

「知ってる知ってる。あれだろ?議員の息子を病院送りにしたんだろ?」

「……そーそー。それなんだけどさ、大野さ、そいつが自分の恋人にチョッカイだしたから、逆上した……って話だぜ」

「へえ。マジ?……つか、恋人いんの。あいつ」


「それがさ、二組の、櫻井だって噂」


……息が止まる。


「……げ。男じゃん」

「男同士なんて、男子校じゃ珍しくねえだろ」

「ぎゃはっ、気持ちわりぃ」



わいわいいながら用を足して去っていく声。


「………」


息苦しくて息苦しくて。
俺は、何度も深呼吸した。

便器から立ち上がることができなかった。

翔の様子がおかしかったことが、今の会話で繋がった。


……そういうこと。 
  

だから、……ほら。

やっぱり俺は、嫌がられてんだ。 

触れたら避けられるわけが、ようやく分かった。

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